東洋経済2021/03/13 12:00小林 偉 :メディア研究家
https://toyokeizai.net/articles/-/415975
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かつて広告代理店に勤務していた立場から本音を探ると……ある一定の年齢以上の人間は長年親しんできたビールの銘柄や、化粧品メーカー、自動車の車種、携帯電話のキャリアなどを簡単にはかえないもの。

スポンサーはそうした点で柔軟に対応する、若者層に刺したいから若者層も支持する番組に広告を出したい……個人視聴率導入で顕著になった情報を基に、テレビ局側がその点を“忖度”した結果とも推測できるわけです。

テレビ界全体を見ても、テレビ行為者率(日常的にテレビを利用している人の割合を調査したもの)は近年、特に20、30代での落ち込みが激しく、いわゆるテレビ離れが加速しているのは数字のうえでも裏付けられています。
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■「今の大学生が見ているテレビ」トップ20
こうした現状に対して「では、若者は本当にテレビを見ないのか?」「若者が好むテレビ番組とは、どんなものなのか?」という疑問が浮かんだ筆者は、教鞭を執らせていただいている大学の受講生(3、4年生以上)たちを対象に、昨2020年秋、アンケートを実施した次第。

設問は単純明快に「現在、あなたが定期的に視聴しているテレビ番組を思いつく限り、ランダムに挙げて下さい。※但しドラマを除く」というもの(ドラマを除外したのは、原則3ヵ月単位で番組がかわるため)。20番組以上も挙げた者もいれば、1番組だけという者もいましたが、「テレビを全く見ない」という学生はいませんでした。

対象が60人弱、日大藝術学部の学生であり、コロナ禍で自宅滞在時間が例年より長いという特殊性こそありますが、現在の若者(20〜23歳)の嗜好・傾向程度は測れるのでは。ちなみに概算男女比は、男性35%:女性65%でした。

では、その集計結果(トップ20/27番組)を発表してまいりましょう。

19位『ZIP!』(日本テレビ系)
19位『ネタパレ』(フジテレビ系)
19位『関ジャム」(テレビ朝日系)
19位『バイキング』(フジテレビ系)
19位『櫻井有吉THE夜会』(TBS系)
19位『くりぃむナンチャラ」(テレビ朝日系)
19位『セブンルール』(フジテレビ系)
19位『日向坂で会いましょう』(テレビ東京系)
19位『グレーテルのかまど』(NHK Eテレ)

13位『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)
13位『全力! 脱力タイムズ』(フジテレビ系)
13位『news ZERO』(日本テレビ系)
13位『乃木坂工事中』(テレビ東京系)
13位『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)
13位『バナナサンド』(TBS系)
11位『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)
11位『スッキリ』(日本テレビ系)

9位『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)
9位『あちこちオードリー』(テレビ東京系)
7位『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)
7位『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)
5位『VS嵐』(フジテレビ系)
5位『しゃべくり007』(日本テレビ系)
4位『有吉の壁』(日本テレビ系)
2位『アメトーーク』(テレビ朝日系)
2位『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)
1位『水曜日のダウンタウン』(TBS系)

今年4月で放送開始から丸7年となる人気番組が堂々の1位でした。さまざまなバネラーが持ち寄る“説”を取材し、VTRにて検証、それについてトークするというシンプルな構成ですが、安定した人気を誇っているんですねぇ。数多あるダウンタウンがMCを務める番組中で唯一ランクインし、しかも全体の4分の1以上が支持する1位というのも興味深かったです。

さて、ここまでのトップ20(27番組)のラインナップを見て、ある点にお気づきになった方もいらっしゃるでしょう。

そうです。毎週発表されている「世帯視聴率」トップ20の常連番組である『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)、『サンデーモーニング』(TBS系)、『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ系)、『踊る! さんま御殿!!』(日本テレビ系)、『秘密のケンミンSHOW極』(日本テレビ系)、『人生の楽園』(テレビ朝日系)、『プレバト!!』(TBS系)、『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK総合)といった番組がランクインしていないこと。

当然の如く、アンケート集計時にこの点を注視していたのですが、実は上記の番組を挙げた学生はいずれもゼロ!  その人気がシニア層に支えられている傾向が少なくとも、このアンケート上では明らかになったのです。

シニア層の見るモノになりかねない現状のテレビ界。もちろん、テレビは若者層だけが見ればいいというモノではないものの、一応、番組制作側の人間であり、シニア層である筆者にとって、いろいろと考えさせられる集計結果でした。

(一部略)