それって実力なのか?
世の中、「努力が100%だ」という信仰で溢れかえっている。

しかし、考えてもみてほしい。

ありとあらゆることにおいて、「100%自分の実力だ」と言えることは、実は少ない。

遺伝子か、環境か。先天的か、後天的か。

そういった視点も、幸せに生きるためにはある程度、必要だ。

本人がモテる努力をして恋人ができたとしても、元の顔のパーツがよかったから、つまり遺伝子の影響もあったと言えたりする。

そのように、1つの決定的な要因はなく、さまざまなことが絡み合って、人生は成功へと導かれていく。

その事実を受け入れるための話をしておこう。

医者の子が医者になるワケ
まず、多くの人は、「自由意志」を大きく扱いすぎている。

自由意志とは、「よし、これをやるぞ!」とハッキリと自分で意識して、その上で努力によってそれを成し遂げるような力のことだ。

お金儲けの本やダイエット本などは、自由意志が正常に機能することが大前提として書かれている。

すると、お金が稼げなかったり、痩せなかったりするのは、「あなたの意志が弱いからだ」と著者は言い逃れができる。

合格実績をウリにしている予備校や家庭教師も、最終的には「あなたの頑張りが足りなかった」と言うことだってできる。

ある意味で最強の思考法である。

さて、この「自由意志」によって人生を変えられる範囲は、一体どのくらいあるのだろうか。

僕は、ゼロではないが「ほぼ少ない」と思っている。

たとえば、景気の良さと自殺率は関連するし、お金持ちの家に生まれたほうが、いい学校に進学できる。

これは社会学の領域になるが、個人の行動は、環境によって「ある程度」は決められてしまっているのだ。

ここでの「ある程度」という表現がポイントである。

親が医者だから子どもも絶対に医者になるわけではない。それはみんなわかっている。

しかし、子どもも医者になるであろうと、親や親戚はなんとなく望んでいる。

子どもも、幼い頃からなんとなく意識をする。

毎日の思考に影響すると、大学受験を考える頃に、医学部を選び「やすく」なる。

「医者になるよ」と言ったところで、反対する人も少ないだろう。

そうなると、逆のことも言える。

親がだらしなくて、子どもも金遣いが荒くなったり、大学や高校に行かなかったりしやすくなってしまう。

そんな環境に育った子に向かって、「お前の頑張りが悪い」「お前の頭が悪い」というように、100%自己責任で責めることはしてはいけない。

ひらめきもないまま、ムダな努力を積み重ねていっても意味がない。耳障りのいい言葉だけが広まるのは、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
★抜粋
https://diamond.jp/articles/-/262057