1/17(日) 11:03配信
デイリー新潮

IKKO

 人を傷つけない笑いが良しとされ、威圧的なMCは老害と呼ばれる現代。今「毒舌」タレントたちは肩身の狭い思いをしており、中でもオネエ系タレントたちは相当心細いのではないだろうか。時代の流れを読んでか、数々の番組でMCを務めるマツコ・デラックスさんでさえ引退を口にするようになった。親友のミッツ・マングローブさんも、かつてほどテレビで見かけない。しかしそんな中で、唯一気を吐いているのが「どんだけ〜」でおなじみのIKKOさんだ。NHKから民放までコンスタントに出演し、昨年のクリスマスイブには石橋貴明さんのYouTubeにも出演していた。面白いのはどの番組でも本業のメイクアップアーティストとしてではなく、お笑いタレント的な立ち位置で出演していることである。

 おそらく一番の理由は、人気お笑い芸人・チョコレートプラネットの松尾さんのモノマネによる影響だろう。それは「オネエ系なのにいじられキャラ」という、IKKOさんの特異なポジションをよく表している。マツコさんはあれだけ人気でも、マツコさんのモノマネ芸人はほぼ皆無だった。どちらが上という話ではなく、マツコさんはいじられるよりいじる方が良さが発揮できるタイプであり、多くのオネエ系タレントもそうだったということである。

 マツコさんがスターとなった一番の理由は、観察眼の鋭さと絶妙なバランス感覚に基づく毒舌っぷりだった。ミッツさんも同じだが、最初の指定席はひな壇やコメンテーターなど、「物申す」「噛みつく」立場で人気を博した。オネエ系タレントとくくるのも乱暴だが、例えば美輪明宏さんや美川憲一さん、池畑慎之介さんやおすぎさん・ピーコさんらの時代を振り返っても、ご意見番として重宝されてきた面々ばかりである。彼らが誰かを「いじる」ことはあっても、「いじられる」のは許されない。そういう不文律があったように感じる。

 だからIKKOさんの立ち位置は相当に珍しい。自身を過剰にデフォルメされたモノマネを嫌がるタレントは多いが、IKKOさんはノリノリで「どんだけ〜」と加わる。とんねるずの「みなさんのおかげでした」では落とし穴に何度も落とされ、ゲスト陣を爆笑の渦に巻き込んだ。粉まみれで変なヅラまでかぶせられるのは、不本意だったろう。でも、嫌な顔一つ見せずに一緒になって笑っている。サービス精神あふれる人柄がうかがえた。

 実は受け答えも、失礼だがそんなに面白いわけでもない。先日の番組では「IKKOさん、自分で言って自分で笑ってますね」と言われていた。でも「やーだー」と楽しそうに受け流している。いじられキャラで、気の利いたことも言えない、従来のオネエ枠とは真逆のポジション。でもその唯一無二の枠を得たからこそ、息の長い活躍ができるのだろう。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/536db9e13f78fbb8ec99a2ba89a40bb0f2f03107
>>2続く