1/11(月) 12:00
スポーツ報知

大倉山から力強く飛び出す雪印メグミルク・栃本

◆スキージャンプSTV杯(10日、札幌・大倉山ジャンプ競技場=HS137メートル、K点123メートル)

 今年最初の札幌での大会が行われた。W杯組不在の男子は、栃本翔平(31)=雪印メグミルク=が1回目132メートルで3位につけると、2回目に最長不倒141メートルを飛び、251・7点で初優勝を飾った。2010年バンクーバー五輪代表が苦しい時期を乗り越え、15年HBC杯(1月12日、大倉山)以来、冬の国内大会を6年ぶりに制した。女子は一時帰国中のW杯組が表彰台を独占し、伊藤有希(26)=土屋ホーム=が2位だった。高梨沙羅(24)=クラレ=は海外調整のため出場していない。

 6年ぶりに栃本が表彰台の中央に戻ってきた。今年初の札幌開催で1回目3位から大逆転で優勝。「優勝の景色はいいですね。2回目を飛んだ瞬間、いけると思った」。男子ただ一人のヒルサイズ越えで15年1月以来の国内V。久々の感触をうれしそうにかみしめた。

 苦しい時期をようやく乗り越えた。バンクーバー五輪に20歳の若さで出場した期待の星も昨年12月21日に31歳を迎えた。15年HBC杯以降は表彰台こそあれど頂点には届かなかった。それでも「自分らしく淡々と」、いつか来るはずの復活へ黙々と爪を研いできた。

 同じ雪印の佐藤幸椰(25)、佐藤慧一(23)ら、次々出てくる後輩の姿も謙虚に冷静に見つめ、良いと思ったことはどん欲に吸収。今冬にはスキー板のかかと部分の高低を微調整し、この日は5ミリほど高くした。「悪い部分を無理して修正するのではなく良い部分を伸ばす。足首は硬いけど、脚力は自信がある。人より角度をつけることで飛び出しに力強さが加わった」と好感触の栃本に、スキー部の岡部孝信コーチ(50)も「腐らず周りに流されず練習を続けていた。1位だけが取れなかったが、これがきっかけになるはず」と目尻を下げた。

 以前からジャンパーとしての目標は五輪よりW杯個人総合制覇。18―19年に小林陵侑(24)=土屋ホーム=が日本男子初の快挙を成し遂げたが、欲求は衰えていない。雪印で同期の伊藤謙司郎(31)=現土屋ホーム=が昨季限りで引退するなど入れ替わりの激しいジャンプ界だが、まだまだ諦めるつもりはない。「トップを目指すためもっと上へ。この優勝を再浮上のきっかけにしたい」と栃本。遠回りも糧に、実力者が再びスターダムにのし上がる。(川上 大志)

 ◆栃本 翔平(とちもと・しょうへい)1989年12月21日、札幌市生まれ。31歳。札幌藤野小、札幌藤野中、道尚志学園高を経て08年に雪印メグミルク入り。小3で所属の札幌ジャンプ少年団時代から、同期の伊藤謙司郎と良きライバル関係を続けてきた。高校時代の07、09年には世界選手権に出場し、団体で銅メダル獲得。10年バンクーバー五輪では団体戦5位入賞。174センチ、60キロ。

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