デイリー新潮

いまだ大台20%の壁を破れない朝ドラ「おちょやん」(NHK)だが、朝ドラを毎回見ている視聴者には実に評判がいい。理由の一つに、出演者たちの関西弁が板についているという指摘がある。大阪放送局の制作だから、関西出身者たちが多いのはもちろんだが、なにより東京出身のヒロイン・杉咲花(23)の大阪弁が完璧と舌を巻く業界人が多いのだ。

 大阪出身のドラマプロデューサーはこう言う。

「もともと杉咲は子役時代からドラマや映画で活躍し、主演した『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS)や『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日)で、演技の巧さには定評がありました。『おちょやん』の大阪弁に至っては、天才的としか言い様がありません。もちろん、彼女の努力があってこそです。東京出身で、母は東京出身のロックボーカリスト、チエ・カジウラ氏。すでに離婚していますが、父は元レベッカで現在はDIAMOND☆YUKAIらとロックバンドRED WARRIORSを組むギタリストの木暮武彦氏で、こちらも東京出身。これまで大阪とはほとんど接点がなかったはずなのに大したものですね」

 ましてや「おちょやん」のモデルである浪花千栄子との類似点も見当たらない。

ネイティブからも褒められる
「彼女の父親役で兵庫出身のトータス松本すら、『昔の河内弁は難しい』とこぼしながらも、杉咲の関西弁をべた褒めしていました。番組当初の舞台は南河内でしたから、トータスはじめ子役もベタベタの河内弁でした。ひょっとすると、関東では馴染みのない河内弁のイメージが、いまひとつ視聴率が上がらない原因かもしれません」

 現在の舞台は大阪の中心、道頓堀だ。

「話す言葉も浪花言葉となりました。群馬出身の篠原涼子の大阪弁もほぼ完璧と言っていい。夫役の名倉潤は姫路出身ですから喋れて当然ですが、兵庫の西のほうは言葉がちょっと違いますから、篠原の前では少し下手に聞こえるほど。篠原のライバル茶屋の女将、いしのようこは芦屋出身で、こちらも完璧。脇を固める西川忠志は西川きよし師匠の息子ですし、ほっしゃん(星田英利)、板尾創路らが上手いのは当たり前。唯一、のちに杉咲と夫婦になる成田凌は、お世辞にも上手いとは言えない」

舞台は関西でもヒロインは……
 これまで大阪制作の朝ドラには、関西弁との長い葛藤の歴史があるという。

「朝ドラ第103作目となる『おちょやん』ですが、大阪制作としては44作目となります。第4作『うず潮』(64年、主演:林美智子)が初の大阪制作で、舞台は広島や東京でした。当時はまだ、1作で1年間放送していました。現在のように半年ずつ前期と後期で分け、後期を大阪制作するようになったのは75年から。その大阪版の1作目が『おはようさん』(75年後期)です。舞台は初めて大阪となり、ヒロインは秋野暢子でした。彼女は大阪ミナミの呉服屋さんの娘ですから、言葉もネイティブ。難なくクリアしていました。次に関西(神戸)が舞台になったのが『風見鶏』(77年後期)で主演は新井晴み(当時は新井春美)。彼女は東京出身ですが、関西弁が上手かったかどうか、あまり記憶がありません。というのも、全国区のドラマでコテコテの関西弁が使われることが少なく、例え下手でも、それっぽいイントネーションがついていれば、関東人はむろん関西人も気にしませんでしたからね」

 これを機に大阪制作の朝ドラには、必ずと言っていいほど関西が舞台になる。

「地元愛が強いんでしょうね。広島と京都が舞台の『わたしは海』(78年後期)のヒロインあいはら友子(当時は相原友子)は神戸の出身。滋賀・大阪が舞台の『鮎のうた』(79年後期)のヒロイン山咲千里は京都出身。宝塚歌劇団を描いた『虹を織る』(80年後期)の紺野美沙子は東京出身ですが、ヒロインは山口県出身という設定でした。大阪が舞台の『よーいドン』(82年後期)の藤吉久美子は福岡出身ですが、大阪の大学に進学。在学中にオーディションを受けヒロインに選ばれています。まったく関西弁が話せなければ、ヒロインの出身地を他の地方にしたり、出身地は関西でなくても関西弁に馴染みのある女優をヒロインにしたようですね」

 大阪が舞台の「はっさい先生」(87年後期)の若村麻由美は東京出身だが、ヒロインも東京生まれだった。

 もちろん例外もある。「純ちゃんの応援歌」(88年後期)の山口智子は栃木出身だが、ヒロインは和歌山生まれで、舞台は大阪、滋賀とオール関西だった。彼女は関西弁の台詞についてこう語っている。

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