これまで2回にわたって、23年間のNHK記者生活で感じた違和感を書いてきた。私が言いたいことはシンプルだ。

「サービスの質が低下しているNHKの受信料は下げるべきだ」

 最終回の今回は、受信料の問題について、報道の最前線で感じた私見を述べたい。

■地方のニュース枠削減でサービス低下

 いま多くの視聴者がさほど意識しないまま進行しているのが、サービスの低下である。ずばり言うと、地方局のニュース放送枠の大幅削減だ。

 働き方改革で記者の休暇取得が進む中、最近は土日の勤務や泊まりを廃止する地方局が増えてきた。記者がいなければ当然、ニュースも出なくなる。必然的にローカルニュースの放送枠は、段階的に削減されることになる。

 ひと昔前は大都市圏を除くほぼ全都道府県で、土日も、各放送局からの地元ニュースを朝・昼・夕の3回放送していた。だが、ここ数年、地方局で廃止が進み、「管中」といわれる首都圏や大阪、名古屋などの拠点局からの放送を、そのまま該当エリア内の県でも流すようになっている。土曜日や日曜日に単独のローカルニュースを出し続けている局は、全国でも数えるほどしかなくなった。

 首都圏在住の方には、NHKの土日の午後0時10分からの首都圏ニュースを見てほしい。冒頭の挨拶が以前は「ここからは関東のニュースをお伝えします」だったが、現在は「ここからは関東甲信のニュースをお伝えします」に切り替わった。山梨県と長野県の局でこの時間のローカルニュースを放送しなくなったためだ。

 しかも最近は、単独のローカルニュースを放送している地方局でも、平日夕方6時10分から7時までのローカル放送番組が放送されない機会が増えている。年末年始やお盆の時期などは、別の番組で穴埋めして休止するからだ。

 こうした事態をNHKはあえて広報しないので、視聴者もあまり気づかない。だが、地方のNHKの放送サービスは、明らかに低下していることは間違いない。

■受信料はやはり値下げすべき

 こうした状況にもかかわらず、受信料の値下げは進まない。1世帯が支払う受信料は、契約数の多い衛星契約の場合、月額2170円、年間約2万6000円に上る。NHKは昨年10月に月額35〜60円の値下げをしたが、この程度ではスズメの涙と言われても仕方あるまい。

 総務省が設置した分科会で示された資料によると、NHKの受信料は国際的にも割高だ。ヨーロッパではNHK並みの水準の国もあるが、隣の韓国・KBSの視聴者負担は年間約3000円で、集められる額は650億円に過ぎない。

 また、有料テレビの「Amazonプライム・ビデオ」は月額500円、「Hulu」でも1026円だ。災害報道などの使命を担うNHKと同列視できないにせよ、やはり受信料は高すぎるのではないか。

 実は私には故郷で年金生活を送る80過ぎの母親がいる。自営業で加入は国民年金のみだったため、ひと月当たりの受給額は4万円ほどしかない。生活保護を受給できるレベルだが、爪に火を灯すような生活の中から国民の義務とばかり、やり繰りして受信料を納めている。こうした高齢者は決して少なくない。私がNHKに入局して湯水のごとく経費が使われる実態に反発を覚えたのは、こうした背景もある。

■職員の高年収に高額の住宅補助

 巨額の受信料を背景にNHK職員の待遇は、ネット上で「上級国民」と揶揄されるほど恵まれている。2019年度のNHKの人件費から算定すると、職員1人当たりの年収は1095万円に上る。

 私は比較的高給とされる大手新聞社からNHKに転職した際、よく周囲から「給料が相当減っただろう」と言われたものだが、手取り収入はほとんど変わらなかった。

 とにかく職員へのサポートは手厚い。特に驚いたのは住宅補助だ。持ち家のある職員にも毎月5万円の住宅補助が支給される。つまりNHK職員はマイホームを購入すると、住宅ローンのうち5万円は会社に肩代わりしてもらっているのだ。

 白状するが、私も家を買うか迷っていた際、上司から「こんな制度はほかの会社にないぞ」と言われ、購入の決定打の1つになった。

(以下略、続きはソースでご確認下さい)


国内 社会 2021年1月7日掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/01071131/?all=1&;page=1
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