DIAMOND ONLINE2021.1.7 4:05(小林信也:作家・スポーツライター)
https://diamond.jp/articles/-/259100

● 厚底シューズを視聴者に見えないようにしたテレビ
  例えば厚底シューズ。ジョガーならずとも気になるテーマだが、私が見ていた限り、この話題に実況アナウンサーはほとんど触れなかった。ネットでは当然、使用率をめぐる情報が飛び交っていた。スポーツ報知によれば、『6区の出場21選手は全員がナイキの厚底シューズを使用した。前回大会に出場した210選手中177人(84.3%)がナイキの厚底シューズ「ズームXヴェイパーフライネクスト%」を使用。今回大会往路では105選手中99人(94.3%)がナイキの厚底シューズを選択。』とあった。

 テレビ観戦では、この分析は難しかった。なぜなら、走者のほぼ全身が映っても足下だけは切れていた、正面から映しても横からは全身をなかなか映さない。つまり、シューズのラインがばっちり映らない工夫がされていたように感じられた。

● 競合他社への配慮?なぜタブーなのか
 ナイキ以外のスポンサー(シューズメーカー)への配慮もあるのだろう。だが、情報番組でさえも取り上げるくらい“国民的関心事”になった厚底シューズ問題を、その成果や傾向が最も表れる舞台のひとつ、箱根駅伝でタブーにするとはどういう世の中だろう?

 箱根駅伝を見ている人たちにとって、単純にどのメーカーのシューズが履かれていたかを知りたいだけではない。厚底シューズは、当然、選手たちの走りのスタイル、技術、戦術や決断にも大きな影響を与えているに違いないと思うから、この話題は重要だ。

 実際、レース後の分析記事の中には、「創価大の選手たちは、厚底シューズは履いていたが、爪先走りでなく、足裏全体を着ける法で走っていた。それが9区まで快走した要因のひとつ」であるとの指摘があった。そうであれば「なるほど」という話だが、肝心なテレビが報道にバイアスをかけているものだから、こうした記事もまた、対ナイキをもくろむ他社への配慮があるのかもしれないなどと勘繰ることになる。

 解説の瀬古利彦さんは薄底シューズで快走したレジェンドだ。忌憚のないシューズ論、走法論などをもっと展開してくれたら、箱根駅伝の機会に走る技術の面白さ、時代とともに変わる技術の背景なども知れてずっと興味が深まると思うのだが。

● 各大学ユニフォームに企業広告、専修大のスポンサーは…
 スポンサーといえば、気になったのは各大学がユニフォームにプリントしていた胸の広告だ。今年から、各大学が1社、スポンサー名を付けることができるようになった。胸とパンツに1カ所ずつ。大半の大学が左胸(または右胸)にスポーツメーカーのロゴマークを、右胸(または左胸)に企業名を入れていた。中には早稲田大、日体大、中央大など、企業名のない大学もあった。

 目を凝らして見た結果を記せば、総合優勝した駒澤大は右に「日能研」、左にナイキのマーク。2位創価大は右に「創友会」、左にミズノ。3位東洋大は右に「健康ミネラルむぎ茶」、左にナイキといった具合。解読を試みてもテレビではなかなか読み取れない企業名も少なくなかった。

 左肩からタスキをかけると、ちょうど企業名が隠れて見えないパターンも結構見られた。気になったのは、「こんなに小さくて、広告効果は認められるのか?」という点だ。テレビに映る露出効果でなく、大学の駅伝チームを応援しているという社会貢献的側面を重視しているなら企業も納得だろうが、どうせ入れるならもう少し大きくてもよいように感じた。この大きさのままなら、来年は文字色に工夫が必要だろう。白いシャツにくっきりしたロゴだと比較的目立つ。

 終始、最後尾を走ることの多かった専修大はそれほど長い時間テレビに映らなかったが、カタカナの「アマタケ」という企業名は印象に残った。岩手県大船渡市にある「サラダチキン」が主力商品の会社で、前社長が専修大の前校友会長という縁があって、これまでもさまざまな支援をしているのだという。こうしたサポートについて、なぜ、触れてはいけないもののように扱ったのか。そういうしらじらしさがかえって気持ち悪い。

●多くの白バイがBMWの理由
 なぜ日本製でないかといえば、日本のオートバイメーカーが電動バイク(とくに大型)の実用化にさほど熱心でなく、白バイに使えるような日本製電動スクーターがないからだとの指摘には、日本企業の一側面が見える気がした。ただ、すべてBMWだったわけではなく、区間によっては日本製の通常の白バイが使われていた。こんな話も、11時間も見る中では格好の話題だと思うが、スポンサーに関連する話題はできるだけ避けて通るという、つまらない傾向に支配されていた。(長文のため抜粋、以下リンク先で)