アンジャッシュ渡部建の『笑ってはいけない』復帰騒動は、日本の芸能界におけるダウンタウン松本人志の圧倒的な権力を多くの人に再認識させた。

 まず経緯を振り返ろう。11月17日発売「週刊女性」(主婦と生活社)が、2020年大晦日放送の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス24時!』(日本テレビ系)で渡部が復帰することを伝えた。収録日は同月18日だともあり、詳細な内容だった。

 同番組では、ベッキー、袴田吉彦、原田龍二、元衆議院議員の宮崎謙介氏などが出演する「不倫騒動枠」があるため、渡部もコントへの出演をきっかけに復帰を探っているというわけだ。

 「週刊女性」をきっかけに週刊誌やスポーツ新聞もいっせいに後追い報道を始めたが、これに世間は大反発。渡部の不倫が女性を性的に貶めるものであったこと、多目的トイレを利用するという常識の逸脱、6月に芸能活動を休止してから雲隠れ状態で会見も開いていないことなどがその理由だった。

 こうした視聴者の反応を経て、11月22日放送『ワイドナショー』(フジテレビ系)で松本は<あの番組は、誰がゲストでどこで出てきて何をするのか、我々は知りたくない。ずっとドッキリを仕掛けられる受け身の側だから><収録前にネットニュースで知らされるって。考えられない>と激怒。渡部が登場した際も<ネットで知ってたわ>と思ってしまったため新鮮な反応ができなかったと明かし、確かに渡部の登場シーンを撮影済みであることを匂わせた。

 12月3日に渡部は急きょ謝罪会見を開くが、会見が始まる約1時間前、松本は<あえて会見の前に。。。オレと渡部の共演は当分無いと思うよ〜>と牽制のツイート。その影響もあったのだろうか、記者から何度も『笑ってはいけない』出演の有無について繰り返し問われても、渡部は口を閉ざし続けるしかなかった。出演オファーがあったのか、収録済みなのか、といった質問の全てに沈黙を貫いたのである。日テレ側から箝口令が敷かれていたようだ。

悪いのはアンジャッシュ渡部だけ?

 この件では、謝罪のプロセスを経ずに番組に出演しようとした渡部ばかりがメディアで叩かれていて、日本テレビや松本への批判はほとんどなかった。しかし当然の話だが、番組の出演にはまずテレビ局からのオファーが必要で、渡部が「出たい」と言ったとしても出られるわけではない。

 渡部サイドだけの意向で、大晦日の人気特番への出演がかなうはずはなく、番組側が渡部を登場させる演出を狙ってオファーしたはずだ。人力舎、吉本興業、日本テレビの関係において、どこかでボタンのかけ違いがあったかもしれないが、渡部だけが「謝罪もせずに復帰するとは何事だ」などと責められるのも違うだろう。

 この件については、アンジャッシュの所属事務所・プロダクション人力舎の玉川大社長と、『行列のできる法律相談所』の総合演出として知られる日本テレビの高橋利之氏の話し合いによるものだったという内情を、12月10日発売「週刊文春」(文藝春秋)が明かしている。それが事実であれば、オファーをした日本テレビも決して迷惑を被った“被害者”ではない。

 松本に関しても、なぜか渡部や週刊誌・スポーツ紙に迷惑をかけられた被害者のようなスタンスだが、果たしてそうだろうか。松本の名前は『ガキの使いやあらへんで!』の企画・構成にクレジットされている。番組の性質上コントの全容までは把握していないにしても、渡部の復帰という重要事項を、松本に打診せず本当のサプライズとして進めたのだろうか。

 前述「週刊文春」によれば、松本を怒らせたこともあって渡部の出演パートはカットになったというが、日テレとしては、大炎上した謝罪会見も含めて番組への注目度が高まっている中、渡部のシーンも使いたいところだろう。松本を説得し、オンエアしてしまう可能性もある。

wezzy 2021年1月1日 12時0分
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