東京ドームは12月17日、都内で臨時株主総会を開き、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが提案した長岡勤社長ら取締役3人の解任を求める株主提案をいずれも否決した。

 臨時株主総会は9.61%の株式を保有するオアシスの求めで開かれた。オアシスは現経営陣が非効率な経営を続けていると主張し、3人の解任を提案した。東京ドーム側は「現在の経営体制が最善」とし、株主提案に反対の意向を表明していた。同社が公表した臨時報告書によると、反対の割合は長岡勤社長が71.83%、社外取締役の森信博氏(元みずほコーポレート銀行副頭取)が64.46%、秋山智史氏(元富国生命保険社長)が66.51%だった。

 三井不動産がTOB(株式公開買付け)を実施中で、オアシスは「TOBに応じる」と表明していることから、株主総会を開催する意義はほとんどなかったといっていい。オアシスに対抗するホワイトナイト(白馬の騎士)として登場した三井不動産は、11月30日から21年1月18日まで東京ドーム株のTOBを実施中。TOB価格は1株1300円で買収総額は1205億円。三井不動産が東京ドームを完全子会社にしたのち、2割をプロ野球球団、読売ジャイアンツを傘下にもつ読売新聞グループ本社に譲渡する計画。

 東京ドームはTOBに賛同すると表明。大株主のみずほ銀行はTOBに応募する意向だ。三井不動産と読売が連携してドーム周辺を一体開発・運営して、家族連れで楽しめるボールパーク構想を推進する。

主力の東京シティドーム事業はプロ野球とコンサートが収益の2本柱
 三井不動産が買収した後、東京ドームの経営をどうするのかに焦点が移る。ボールパーク構想を進めるにしても、これは中期的な目標になる。新型コロナウイルス感染拡大が東京ドームの業績を蝕んでおり、赤字の東京ドームの立て直しが急務だ。

 コロナ前の20年1月期連結決算を見てみよう。売上高は前期比5%増の915億円、営業利益は2%増の117億円、純利益は15%増の80億円だった。東京ドームシティ事業が主力。東京ドームや東京ドームホテル、遊園地のアトラクションズ、温泉施設のラクーア、シティホール、後楽園ホールなどを運営し、売上高は696億円、営業利益は160億円。連結売上高の76%を稼ぎ出している。

 東京ドームの利用者数は前期比5%増の977万人。ジャイアンツの主催試合の入場者数は302万人。遊園地のアトラクションズの入場者数は591万人だった。東京ドームの稼働率は8割を超え、プロ野球はそのうちの3分の1程度。ジャイアンツに球場を貸し出し、賃料を取る一方、グッズの販売は東京ドームが仕入れて行うため、その収益は丸々東京ドームに入る

 コンサートについても会場の貸し出しのほか、自主興行も行っている。5万5000人を収容できる会場としてライブ公演に利用されてきた。プロ野球とコンサートを2本柱とするビジネスモデルが新型コロナの直撃を受けた。

プロ野球は観客数を制限、コンサートは中止が相次ぐ
 20年2〜4月期連結決算は売上高が前年同期比49%減の106億円、最終損益は37億円の赤字となった。2月以降はイベントの中止・延期が相次いだ。コンサートは1公演、プロ野球は無観客でのオープン戦5試合の開催のみとなり、関連商品の売り上げも減少した。

2020.12.30 06:05 ビジネスジャーナル
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