東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

お客さん:お、このイントロは斉藤哲夫の『いまのキミはピカピカに光って』。というより、宮崎美子の印象が強いよね。

マスター:1980年、ミノルタのCMソングでオリコン最高9位、そしてモデルに起用された宮崎美子も大ブレイク。彼女の人生はここで大きく変わった。

お客さん:透き通った海、木陰の下、青いビキニ、はにかんだ笑顔、ちょっと太めの体、そして恥じらいながらも大胆にジーンズを脱ぐ……あんなにドキドキしたCMはなかったなあ。
     
マスター:サイパンで撮影していたCMクルーも手ごたえを感じて、その日の夕方には浴衣バージョンを撮ったという。そしてあれから40年。61歳の奇跡のビキニカレンダーには度肝を抜かれたよね。

お客さん:まさに奇跡だよ。そして、斉藤哲夫の歌声もまたよかった。

マスター:曲を作ったのは鈴木慶一だったんだけど、当時、表立って歌えない事情があった。実は彼、オリンパスのCMも同時にやっていたため、歌うのはまずかった。

お客さん:そりゃまずいよね。

マスター:ポール・マッカトニーのような歌声をイメージしていた制作側が、白羽の矢を立てたのが鈴木慶一の仲間である斉藤哲夫だった。

お客さん:そもそも斉藤哲夫とは?

マスター:このときデビュー10年目。メッセージ性が強い曲で「歌う哲学者」と呼ばれた硬派なフォークシンガーだ。CMソングとは最も遠いところにいたミュージシャンだった。

お客さん:彼の人生もまたここで変わったわけだ。

マスター:そう、そしてもう一つ裏話。実はこの曲はCM用に作られたもので、もともと15秒しかなかった。放送開始後、反響が大きくなり、鈴木慶一が急いで曲を作り足して、2番3番の歌詞は糸井重里が作った。

お客さん:ヒットにはスピードも重要なんだね。話を宮崎美子に戻せば、『いまのキミはピカピカに光って』ではなくて、「いまもキミはピカピカに光って」だよね。

 おっ、次の曲は……。

12/20(日) 16:04配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf184bf532a4e47cfa5b294ad1bdc21b2f4234b7
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