SNSでの誹謗(ひぼう)中傷の問題を取材した毎日新聞の連載「匿名の刃〜SNS暴力考」の取材班と、中傷被害の経験を持つジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介さんによるオンラインイベントが15日夜、開かれた。フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」への出演をきっかけにSNS上で中傷を受け、今年5月に亡くなった女子プロレスラー、木村花さん(当時22歳)の母響子さんも参加し、「今もなお続くネットリンチは、許されるべきではない」と訴えた。

 津田さんがモデレーターを務め、取材班からは牧野宏美、宇多川はるか・統合デジタル取材センター記者が登壇。響子さんはオンラインで参加した。

 中傷した側の人々を取材してきた牧野記者は、加害者の共通点として、中傷をしているという意識がないという点を挙げ、「取材に応じた人たちは『どこにでもいる普通の人』という印象でした。誰もが誹謗中傷の加害者になり得るのだと感じました」と話した。

 宇多川記者は、特定の人物を中傷する投稿や書き込みを誘発するマスコミの責任を指摘。「花さんのケースでは、フジテレビが話題作りを優先させた側面が否めません。マスコミや有名人が誹謗中傷を誘発したり、拡散したりしている」と話した。

 響子さんは、花さんが亡くなって「一時は布団から出られなかった」が、「私がやらないと、なかったことにされちゃうんですね。(誹謗中傷を)誘発して視聴率を上げて、お金もうけをした大企業の人がいるわけです。そういう人たちにとっては、私が何も言わないのは都合のいいこと。はってでも訴えないといけないと思った」と、今年7月に毎日新聞のインタビューに応じた理由を話した。

 その結果、自身も「普通の親なら寝込むのに喜んでテレビに出ている」といった中傷被害に遭ったことを明かし、「ネットリンチはまだ行われています。最近では、不倫をした芸能人をたたくのは『誹謗中傷ではなく批判だ』という人たちがいます。何も変わっていないのだと感じています」と無念さを口にした。

 その上で「このイベントに参加しているのは、問題意識の高い人たちだと思います。人が傷つかないようにするにはどうしたらいいのか考え、少しずつ、草の根の活動で今の景色を変えていくことができると思います。一緒に闘っていきましょう」と呼びかけた。
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