>>34
在局中はNHKアナウンサーとしての立場からそう言うしかなかったのだろう
しかし世界中でこの実況の手法がコピーされたのだから悪い実況であるわけが本当はない
そのことは本人もわかっていたと思うよ

余談になるが、相撲実況で名人と言われた杉山邦博はラジオとテレビでは実況のアプローチが全く異なっていた
ラジオと違って見ればわかるテレビでは力士の動きについて最低限の様子しか伝えていなかった

結果実況は「(廻しを)とった!」「(寄って)出る!」というように肝心な部分を盛り上げるエモーショナルなものになっていた
この手法は山本氏の「マラドーナ!」と同じで、テレビを通して観戦している人の臨場感や高揚感をアシストする黒子に徹していたということだ

ハイビジョンの実験放送が行われていた時期、既に定年していた杉山氏が実況を担当することを知った
当時ご家庭にハイビジョンの視聴環境はなくデパートまで出かけていってようやくそれを観ることができた

なんと杉山氏は「実況をしていなかった」
テレビでは相撲の映像と会場の音が流れているだけで取り組み中は一切喋っていなかったのだ
これは「リアルなハイビジョンで相撲の生の臨場感をできるだけ体感してもらおう」という意図でこういう形になったらしい
杉山氏の名実況を楽しみにしていたのでいささか拍子抜けだったが、当時の実験放送の目的を考えればこれは至極適切な方針だったと言える

良い実況とは「観戦の邪魔をしないこと」だと端的に定義することができるだろう

昨今この正反対をやってしまっている勘違いスポーツ実況のなんと多いことか
実況は担当アナの自己顕示欲を満たすための道具ではない
観ている人のことをまず念頭に置いてどれだけ気持ちよく観戦していただけるか
それが出来ない人間は本来実況をやるべきではないのだ