森達也監督が証言 「学術会議の任命拒否はマッカーシズムやカンボジア大虐殺のよう」
https://sirabee.com/2020/10/22/20162434185/

菅義偉首相が日本学術会議の推薦した新会員候補者のうち、6名を任命しなかった件について、
映画人有志22名が、連名で「日本学術会議への人事介入に対する抗議声明」を発表した。
青山真治氏や是枝裕和氏、塚本晋也氏といった世界的にも著名な映画監督が名を揃えた。
呼びかけ人の一人で、東京新聞の望月衣塑子記者を追った最新作『I?新聞記者ドキュメント』
で知られる中心メンバーの森達也監督が21日、国会内で行われた日本学術会議に関する野
党合同ヒアリングに呼ばれ、意見陳述を行った。
森氏は任命拒否について「これはさすがにいくらなんでも…」と思い、その気持ちは言い出しっぺの
監督・脚本家の井上淳一氏や森氏がすぐに連絡した是枝監督にも共通していると語る。
「ここまで露骨にやるのか。あけすけなのか。何ら抑制もない。隠そうともしない。理由を聞かれても答えない。
誤魔化せよ、と思うが、それすらもない。胸を張ってやっている」と怒りを顕にする森氏。
アカデミズムに対する政権の介入は安倍政権以降、露骨になってきて、菅義偉首相はそれを踏襲していると批判した。
森氏は、大学や研究への補助金が削減され、政府の意向をくんだ研究に予算をちらつかされ惹かれてしま
う中、大学人は踏ん張っていると評価。その象徴的な日本学術会議は重要であるにも関わらず、そこが標的
にされたので危機意識を持ったという。
「俯瞰的・総合的に判断した」と菅首相がいう一方、「私は(任命者のリストを)見ていません」と答えたことに
ついて、森氏は「俯瞰とは上から見ることです。上から見たのに、『見ていません』という訳の分からない日本
語だ。政治家は言葉が重要です。なのに(安倍政権以降)言葉がどんどん荒廃している」と語り、現政権の説明を批判した。
映画人たちが声をあげた理由として、森氏は「弾圧の歴史があるからです」と述べ、まず、アメリカで60年代に
吹き荒れたレッドパージ(赤狩り)をあげた。
「共産主義的なもの、共産主義に親和性の高いものがどんどんパージされていった。そして、マッカーシズム
に行き着いた。学者などがやり玉に挙げられた。とくに標的にされたのは影響力のあるハリウッドです」と述べた森氏。
たくさんの映画監督、脚本家、プロデューサーが証人として議会に呼ばれ、共産主義と関わりのないことを宣
誓されられ、拒否したものは職を追われたという事例を紹介。
「日本にも赤狩りがあった。たくさんの映画人が職を追われた」と述べ、それらの負の歴史があるからこそ、映
画人は立ち上がったのだと説明した。

■ポル・ポト派の愚民化政策にも酷似
次に6人の任命拒否と重なったのは、ポル・ポト派(クメール・ルージュ)によるカンボジア大虐殺だと森氏は語る。
「一説では、国民の3分の1が虐殺されたと言われている。クメール・ルージュがまず標的にしたのが
、アカデミズムの人たち。大学の教員、大学生、高校の教師…。範囲はどんどん広がり、最後には文
字を書ける人、眼鏡をしている人までが殺された」と述べ、知識層の虐殺は政府にとって都合の悪い
知識はいらないという愚民化にあったと解説。
「今考えると馬鹿じゃないかということが、ほんの40年前に行われた」と批判した。
最後に森監督は「人間は馴致能力がある。つまり適応能力が強い。今はゆでガエルの温度が5℃上がった状況。
それに慣れてはいけない」と警告を発し、報道が少なくなってきた学術会議の問題を今後も粘り強く取り上げて
いくことの必要性を語った。