■公開3日で興収46億円

 16日公開のアニメ映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が18日までの3日間で興行収入(興収)46億円を突破した。全国403館で公開され、初日は1館で42回も上映したシネコンも。配給元の東宝の株価は年初来高値更新。19年に公開された「天気の子」が公開3日で記録した興収16億円の3倍弱というロケットスタートを記録した。

 同作は16年2月から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載開始。19年にアニメが放送され、惜しまれつつも今年5月に連載終了。物語の舞台は大正時代。竈門炭治郎が鬼と化した妹の禰豆子を人間に戻す方法を探しながら鬼滅隊となって、鬼と戦う物語だ。

■新宿では1日90回以上上映

 映画批評家の前田有一氏がこう言う。

「これだけの興収を記録した背景には上映館数が大きい。数えたところ、先週末、新宿のシネコン3館で1日90回以上も上映し、23分に1回、つまり新宿に行けばいつでも見られる状態でした。『007』やマーベルの『ワンダーウーマン』など洋画の大作が先送りで、ライバルがいなかったこと、ファミリー稼働で動員数が増えたことも要因になっている。自粛期間でシリーズ過去作を見る時間ができたこと、マンガ連載が終わった飢餓感も追い風になったと考えられます。こんなシーズンオフの公開で、公開時期も宣伝も準備万端で挑んだ『天気の子』や『アナと雪の女王』を上回ったことからして異例中の異例。今や社会現象です。テレビシリーズは興収100億円の壁を越えるのは難しいといわれていましたが、今までのセオリーを全て覆しそうです」

コロナ禍のエンタメに光明
集英社発行の単行本『鬼滅の刃』/(C)日刊ゲンダイ

 同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏は「鬼滅ブームには“巣ごもり”が大きく影響している」としてこう続ける。

「ネット配信のおかげでテレビ放映後も“後追い”で見ることができ、予習して映画館に足を運べる環境になりました。今は宣伝側の意図を素早く察知し、すぐネットで拡散される時代。商業主義にも乗らずに連載もスパッと終了するなど、あざとさがないというか、あざとさ以上に作者の『鬼滅』に対する“真摯な愛情”が勝っていることがファンの支持を得たのだと思います。まさに“ファンが育て上げた”ブームをメディアも慌てて追いかけている。映画館に行くこと自体に二の足を踏んでいる中、『鬼滅』が映画館に足を運ばせたことはコロナ禍のエンタメ界にとって非常に大きな功績になったと思います」

 死に体だったエンタメ界に「鬼滅ブーム」は、一筋の光明になっている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/bda1e84ffd4dd157b4972349ab6126d0707cd2e6
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