麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第54回

チック・コリアの6年ぶりソロアルバムや、ラン・ランが弾く映画音楽集など、ハイレゾ名盤

2020年10月15日 17時00分更新
文● 麻倉怜士 編集●HK

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 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめ度に応じて「特薦」「推薦」のマークもつけています。優秀録音をまとめていますので、e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!



『Plays』
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特選
 チック・コリアの6年ぶりのソロ・ライヴ・アルバム。モーツァルト、モンク、ジョビン、スティーヴィー・ワンダー、そして自身のオリジナルまで、西洋音楽とジャズ、POPSの作曲家の系譜を探求した。「2つの曲を並べて弾くのがとても面白いです。まずはモーツァルト、つぎにガーシュウイン。この2つはとても合います」とのMCで始まり、ピアノの音を観客に歌わせるという芸の音からは、まるで今、聴いている自分が、その場に立ち会っているような臨場感を感じる。

 そして始まるチック・コリアのモーツァルトのへ長調ソナタの第2楽章「2.Mozart: Piano Sonata in F, KV332」は、メジャーの燦めきとマイナー部の哀しみの感情対比がダイナミックだ。後半は少しジャズ風に崩す。対比として次ぎに演奏されたガーシュウイン「3.Someone To Watch Over Me」は、チック・コリアの本領が発揮されたジャジイな雰囲気を満喫できる。

 音もたいへんよい。3つの会場で録音されているが、会場により音のキャラクターが少し違うのが面白い。アメリカ合衆国フロリダ州クリアウォーターのキャピトル・シアターは、響きも多いが直接音が主体で透明感があり、ひじょうにクリヤー(2018年8月17日)。パリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトンは、きらきらとした輝きが、チック・コリアのピアニズムをより深く演出する(2018年4月26日)。ベルリンのアポステル・パウルス教会はピアノの尖鋭さと教会ならではの深い響きが両立している。ピアノの立ち上がり/立ち下がりが鋭い(2018年4月28日)。
FLAC:96kHz/24bit、MQA:96kHz/24bit
Concord Jazz、e-onkyo music



『シャコンヌ』
チェロ・クァルテットK,、安田謙一郎、藤村俊介、宮坂拡志、木越洋
https://www.e-onkyo.com/image/jacket/s0/mm4081.jpg
特選
 冒頭からテンション感に溢れた合奏だ。4つのチェロの重音の衝撃は、「シャコンヌ」のようにニ短調の悲愴的な和音で始まる場合はならおさらだ。ライナーに「同門ゆえの統一された奏法が醸し出す響きは圧巻」とあるが、まさにこの指摘どおりのコンセプト的にも、奏法的にも同じ方向へ向かう奏者だからこその、音楽的な充実感、緻密さに感動。

  録音もマイスターミュージックらしく、倍音の響きの豊かさと直接音の明瞭さが両立した素晴らしいもの。「9. J.S.バッハ G線上のアリア」は、さまざまな編曲があるが(マイスターミュージックにも同曲だけの多種演奏を収めたアルバムもある)、チェロだけの響きは深く、心に染みいる。ベースの低音、ハーモニーも中音、旋律の高音を出せるチェロだからこそ、成り立つ合奏だ。横浜みなとみらいホールで2020年3月10日、11日にPyramixで録音。

FLAC:96kHz/24bit、192kHz/24bit、384kHz/24bit
WAV:96kHz/24bit、192kHz/24bit、384kHz/24bit
DSF:11.2MHz/1bit
マイスターミュージック、e-onkyo music





『ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲』
ダニエル・ロザコヴィッチ、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ワレリー・ゲルギエフ
     ===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://ascii.jp/elem/000/004/030/4030378/

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 高音質衛星デジタル音楽放送、ミュージックバード(124チャンネル「The Audio」)にて、「麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負」が放送中。毎週、日曜日の午前11時からの2時間番組だ。第一日曜日が初回で、残りの日曜日に再放送を行うというシークエンスで、毎月放送する。