■ カギとなるワクチンの開発

 人権問題のほか、北京冬季五輪開催への不安の声が流れている1つの要因は新型コロナウイルス感染症の影響である。

 パンデミックが終わらないことには、大勢の人間が3密の中でスポーツ観戦ができるとは考えにくい。もちろん、北京冬季五輪の前に東京夏季五輪が開催できるのか、ということも大きな問題である。個人的な見立てをいえば、通常の形での開催は困難だろう。

 一応IOCは、「新型コロナに関係なく」開催すると表明しているので、おそらくは規模をかなり縮小し、観客数を大幅に制限して行う、ということだろうが、ここではひとまずそのことは置いておく。

 来年(2021年)夏に東京五輪がそういうイレギュラーな形で行われるとしたら、その半年後の北京冬季五輪も、通常の形で開催できるのかがやはり問題となるだろう。

 2022年は“中国共産党政治イヤー”である。秋には、習近平が3期目の長期独裁政権を確立できるかどうかが判明する第20回党大会が開かれる。習近平が引退するとなれば北京冬季五輪は最後の花道であり、習近平が中国共産党のルールを破って総書記任期をさらに5年延長するとなれば、習近平長期独裁新時代幕開けの祝賀イベントということになる。いずれにしろ盛大にやらねば、そのメンツにかかわる。

 だがそのためには、この新型コロナに関する懸念を払しょくせねばならない。カギとなるのは、それまでに有効な新型コロナワクチンが完成しているかどうかだ。

 ワクチン開発は今年(2020年)9月初めの段階で、中国、ドイツ、米国などの企業の9種類が臨床試験の第3段階に入っているものの、最終的な科学的検証を終えているものはいまだ1つもない。ただロシアと中国がかなり先を急いでいる。

 中国は第3段階の臨床試験終了前に、前倒しでおよそ40万人の第一線の医療関係者や製薬会社関係者らにワクチンを投与している。だが、中国国内でも、このワクチン投与の「急ぎすぎ」に対して、むしろ不安の声が出ている。国外からみれば、ワクチンの安全性に関する確証のないまま、今の段階で健康な最前線医療従事者に投与するということは「狂気の沙汰」かもしれない。

 中国では主に3種類の新型コロナワクチンの第3段階臨床試験が進められている。ブラジルとトルコ、インドネシアなどで治験者を募集して実施しているが、今のところ重大な副作用は報告されていない。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/4551229520bd708701e84f6632fd57ba75fa0aa8?page=2