日本の歴史と教科書に焦点を当てたドキュメンタリー「映像’20 史実と神話〜戦後75年目の教科書と歴史〜」が、30日深夜(31日午前)0時50分からMBSで放送される。

 この夏、各地の教育委員会で行われている中学校の教科書採択。特に、歴史や公民の教科書に対する関心は高い。国の検定を通過した教科書でも、会社によってそれぞれ特徴がある。

 保守色が強いとされる教科書は日本の建国の経緯について、「神武天皇が兵を率いて大和の国を治めた」という神話を紹介。その陵墓が奈良・橿原にあると記している。それは教科書に記すべき「史実」なのか。

 番組はその陵墓について、幕末には場所が曖昧になり、言い伝えから複数の候補地があったこと、孝明天皇がその一つを神武陵と決めて整備されたことを明らかにする。明治時代には陵墓拡張が行われ、村ごと集団移転を余儀なくされた被差別部落の人々もいた。その「洞村」の跡地に、初めてテレビカメラが入る様子も放送。一連の出来事について、「天皇の皇統を整える可視的証拠」「西欧に伍(ご)するため、伝統的国家であることを示す構造物」が必要だったとする考古学者、今尾文昭さんの指摘は興味深い。

 他に、奈良末〜平安初期、朝廷と戦った東北の蝦夷(えみし)族長、アテルイの処刑地とされる「首塚」をめぐって論争が起きている大阪・枚方も取材している。歴史学者によって「偽史」と指摘され、関連する記述は教科書から消えた。教科書採択に不当な政治介入がないよう情報公開を求める東大阪市の市民団体の活動などを伝えながら、神話や伝承が史実とし独り歩きする背景を探る。

 取材を担当したMBSの斉加尚代ディレクターは、「誰かが作り出した物語が教科書に紛れ込むことは現代でも起きている。史実は史実として教え、神話は史実とは違うということを子どもたちにきちんと教えていかなければいけないと思う」と話した。【倉田陶子】

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ドキュメンタリー「映像’20 史実と神話〜戦後75年目の教科書と歴史〜」の一場面。奈良県橿原市の神武天皇陵=MBS提供

毎日新聞
2020/08/27 13:55
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