中森や高橋も 高校ドラ1候補が軒並み進学に傾くコロナ異変
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「終盤にきて、体力が落ちている。詰められるところを詰めて、臨めばよかったです」
16日、今秋ドラフト1位候補の明石商(兵庫)・中森俊介(3年)が甲子園交流試合の桐生第一(群馬)戦で2失点完投勝利。速球は最速150キロをマーク、9三振を奪う内容にも笑顔はなく、課題ばかりが口をついた。

中森はかねて、この大会が終わってから進路を決めるとしていたが、これでいよいよ大学進学に傾くのではないか、とみる関係者は少なくない。
この日、中森は進路について、「今はまだ考えていない。大学かプロ。完封できればプロでできるという自信になる。そういう気持ちでマウンドに上がったが、9回2失点。まだまだ実力が足りないかなと思う」と慎重な口ぶりだった。

■東京六大学が攻勢
パ球団のスカウトが言う。「中森を巡っては、早大や慶大など東京六大学の名門が関心を示し、中でも明大と法大が熱心に追いかけている。明大はこの日、田中新監督が甲子園に視察に来ていたくらい。明大は近年だけを見ても、高山(阪神)や柳(中日)、坂本(阪神)ら何人もプロに送り込んでいるが、今季は1回戦総当たりで行われる春季リーグで開幕4連敗と苦しんでいる。ライバル校のレベルが上がっているとはいえ、一時と比べて戦力が落ちている。何が何でも中森が欲しいと力を入れ、獲得合戦で一歩も二歩もリードしています。今年の新入生に14人のスポーツ推薦合格者がいるなど比較的、入学しやすい法大も、プロが注目するエース左腕の鈴木(常総学院=4年)が卒業することもあり、投手補強が急務です」

大学進学といえば、中森と同じくドラフト1位候補で、甲子園交流試合で3失点完投勝利を挙げた中京大中京(愛知)の高橋宏斗(3年)も、基本線は大学進学を希望。慶大の推薦入試を受験するという。高校球界を代表する両右腕がそろって、プロよりも大学進学を重視するのは異例といっていい。
近年、高校球児の進学志向は強まっているものの、トップクラスの選手となれば話は別。清宮幸太郎(早実→日本ハム)も根尾昂(大阪桐蔭→中日)も高校からプロ入りし、2018年夏に準優勝を果たした金足農の吉田輝星(日本ハム)は、甲子園前には大学進学が内定していたが、甲子園で自信をつけ、プロ入りへと心変わりした。昨年でいえば、佐々木朗希(大船渡)と奥川恭伸(星稜)が大学進学を選ぶようなものだ。

「中森や高橋にも当然、プロ志向はある。しかし、今年に限っては、プロへ挑戦しようと決意を固めづらい環境にある」と、セ球団のスカウトはこう続ける。
「今年はコロナ禍によって、夏の地方大会、そして甲子園大会が中止になり、高校生たちは活動自粛を強いられるなど、まともに野球に取り組むことができなかった。各都道府県の独自大会が行われたものの、甲子園の交流試合は無観客開催での1試合のみ。多くの観衆がいるなかでの負ければ終わりというトーナメントの緊張感には程遠く、これでは実力も発揮しづらい。そのうえ、U18の開催も12月に延期された。高校生のトップ選手が同じ釜の飯を食うことでお互いが刺激を受け、プロ入りを決意するケースも多い。中森も高橋も、プロ入りしたい気持ちはあっても、プロでやれるという自信を得られる機会が極端に少ないからね」

実際、プロ側も高校生の評価に頭を悩ませているという。「本来なら、編成幹部や全国各地の担当スカウトが一堂に集まり、全選手をチェックするが、甲子園に入場できるのは1球団2人まで。いわゆるクロスチェックができない。無観客開催だから、大観衆の中でどういうプレーをするのか、大舞台に強いのかという精神面も知ることができない。高校生の実力を見極めづらいのが正直なところ。球団によっては、すでに数年間のデータの蓄積があり、ある程度の評価が定まっている大学、社会人を重視するところも出てくるでしょう。中森や高橋がひとまず大学の4年間で実力を身につけたいという気持ちになるのは、致し方ない部分もある。松坂大輔ら過去の超高校級と言われた投手に比べたら、現段階での2人のレベルはだいぶ落ちるだけに、より大学に行ってからという気持ちになっているのではないか」(前出のセ球団スカウト)
(一部抜粋)
以下、リンク先で 日刊ゲンダイ 2020.8.18