新型コロナウイルスの世界的蔓延(まんえん)で来夏に延期された東京五輪の開幕まで1年となった23日、大会組織委員会はメインスタジアムとなる東京・国立競技場で「1年前プログラム」を実施した。

 白血病からの復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(20)=ルネサンス=が感謝と1年後への前向きな思いを訴えた。池江のメッセージは以下の通り。

 池江璃花子です。

 今日は、一人のアスリートとして、そして一人の人間として、少しお話しさせてください。

 本当なら、明日の今頃、この国立競技場ではTOKYO 2020の開会式が華やかに行われているはずでした。

 私も、この大会に出るのが夢でした。

 オリンピックやパラリンピックはアスリートにとって、特別なものです。

 その大きな目標が目の前から、突然消えてしまったことは、アスリートたちにとって、言葉にできないほどの喪失感だったと思います。

 私も、白血病という大きな病気をしたから、よく分かります。

 思っていた未来が、一夜にして、別世界のように変わる。それは、とてもキツい経験でした。

 そんな中でも、救いになったのはお医者さん、看護師さんなど、たくさんの医療従事者の方に、支えていただいたことです。

 身近で見ていて、いかに大変なお仕事をされているのか、実感しました。

 しかも今は、コロナという新たな敵とも戦っている。

 本当に感謝しかありません。ありがとうございます。

 2020年という、特別な年を経験したことで、スポーツが、決してアスリートだけでできるものではない、ということを学びました。

 さまざまな人の支えの上に、スポーツは存在する。本当に、そう思います。

 今から1年後。

 オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、どんなにすてきだろうと思います。

 今は一喜一憂することも多い毎日ですが、一日でも早く、平和な日常が戻ってきてほしいと、心から願っています。

 スポーツは、人に勇気や、絆をくれるものだと思います。

 私も闘病中、仲間のアスリートの頑張りにたくさんの力をもらいました。今だって、そうです。

 練習でみんなに追いつけない。悔しい。そういう思いも含めて、前に進む力になっています。

TOKYO 2020

 今日、ここから始まる1年を、単なる1年の延期ではなく、「プラス1」と考える。

 それはとても、未来志向で前向きな考え方だと思いました。

 もちろん、世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよく分かります。

 ただ、一方で思うのは、逆境から這い上がっていくときには、どうしても、希望の力が必要だということです。

 希望が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても、前を向いて頑張れる。

 私の場合、もう一度プールに戻りたい。その一心でつらい治療を乗り越えることができました。

 世界中のアスリートと、アスリートから勇気をもらっているすべての人のために。

 一年後の今日、この場所で希望の炎が、輝いていてほしいと思います。競泳選手、池江璃花子

 ありがとうございました。

サンスポ

https://news.yahoo.co.jp/articles/31a5d4afaf6720d25591b144cd15fb32b88a7642
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