2020年7月11日 11時00分

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『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』で被害者の一人を演じるメルヴィル・プポー - (C)2018‐MANDARIN PRODUCTION‐FOZ‐MARS FILMS‐France 2 CINEMA‐PLAYTIMEPRODUCTION‐SCOPE


 『スイミング・プール』『2重螺旋の恋人』などのフランソワ・オゾン監督が、フランスで起きた神父による児童への性的虐待事件を題材にした映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(7月17日公開)。本作から、被害者の一人が加害者のプレナ神父と30年ぶりに対面する緊迫のシーンを捉えた本編映像が公開された。

 2016年1月に捜査が開始された「プレナ神父事件」は、一人の被害者の告発がきっかけで80人に上る証言が集まり、プレナ神父が担当する教区を変えながら長年にわたって信者家庭の少年たちに性的暴力を働いていた事実が明らかになった。2020年3月の一審でプレナに禁固刑5年が求刑されている。映画では、20年、30年経ってもなお虐待のトラウマに苦しむ男たちの、告発するまでの葛藤、告発したことによる周囲との軋轢、その顛末を描き出す。

 物語の始まりは、今は妻子と幸福な家庭を築いていたアレクサンドル(メルヴィル・プポー)が、プレナ神父がいまだに聖職者を続けていることを知り、新たな悲劇を食い止めるべく告発を決意したこと。公開された映像では、子供のころに性被害を受けたアレクサンドルがプレナ神父と30年ぶりに対面し、握手を交わすところから始まる。

 「調子はどうだ、元気かね?」と近況を訪ねる神父に、おもむろに「僕に何をしたか覚えていますか?」と問いただすアレクサンドル。会話では、プレナ神父から1983年から1986年まで土曜の写真室で受けた行為を克明に記憶しており、彼がいまだにトラウマに苦しんでいることがわかる。罪を認めつつも自身もまた被害者であるようなそぶりを見せるプレナ神父に、アレクサンドルは静かに宣戦布告。この彼の決意が、多くの被害者の希望への道しるべとなっていく。

 キーパーソンとなるアレクサンドルを演じたメルヴィル・プポーは本シーンについて「このシーンで難しかったのは、プレナの前で崩れ落ちないようにこみ上げてくる感情を抑えることだった。アレクサンドルの人生、そしてすべての信者の人々にとって重要なシーンでしょう」と振り返っている。

 本作は第69回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したほか、被害者の一人であるエマニュエルにふんしたスワン・アルローがフランスのアカデミー賞とされるセザール賞で助演男優賞に輝いた。(編集部・石井百合子)


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