“NHKが映らないテレビ” フィルター開発者「第一歩だ」、籾井勝人元会長「見られないのはもったいない」…受信料の未来を考える

 「NHKだけ映らないテレビ」を購入した女性がNHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた裁判で、東京地裁は26日、
「専門的な知識がない原告が復元することは少なくとも困難」として、「契約締結の義務は存在しない」との判断を示した。つまり、受信料の支払い義務もないということになる。

 裁判で電波を増幅するブースターを使えば受信は可能と主張していたNHK側は判決を受け、「判決の内容を精査して、今後の対応を検討する」としている。
 争点となったのは、NHKの放送信号のみを弱くするフィルターをチューナーに取り付けているテレビだ。
フィルターを開発した筑波大学の掛谷英紀准教授が中古で購入した3000円のテレビを改造、女性に同じ3000円で譲ったものだという。

 掛谷氏によると、このフィルターは7年前、YouTubeにアップされた国会中継の映像に対しNHKが削除要請した問題で違和感を覚え開発。
「秋葉原で部品を買い集めればすぐに作れる」ものだという。

「似たような裁判は今までもいくつかあったが、NHKの方に有利な判決が多かった。最高裁で勝たなければ安心できないので、今回の判決はあくまでも第一歩と考えている。
私自身はNHKと契約し、受信料も払っている。ただ、実際に見るのはBSの番組ばかりで、地上波の番組はほとんど見ない。
BSだけの契約など、視聴者の需要に合わせた柔軟な契約ができれば、NHKの印象も少しは変わると思う」。

 在任の頃からフィルターの存在を知っていたという元NHK会長の籾井勝人氏は、「一番良いテレビ局を見られなくしているという意味では、大変な損失だと言えると思う。
国会中継にしても、政治討論にしても。我々が一番平等にやっているという自負もある。先生がせっかく一生懸命作られたものが世のため人のためにならないのはもったいない。
もっと他の物を作って下さい」と苦笑する。

 一方、元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤氏は「僕は受信料によって色々な技術を身に付けさせてもらったし、後輩たちのことを考えても、
この制度はやはり維持してもらいたい。NHKだからこそできることもいっぱいあるし、最前線で一生懸命やっている職員もいる」とした上で、次のように指摘した。

「受信料という安定した収入にあぐらをかいている人たちもいる。そして電波はみんなのものなのに、政治の報道で言えば安倍さんに近い記者ばかりが出てきて解説するのが物足りないという声もある。
だから、公共放送の在り方に一石を投じたいという掛谷先生のアクションを取られたことには大賛成だ。信頼を勝ち取れるようしようという機運も高まると思う。ただ、裁判までしなければ声が届かないというところは課題だ」。

■受信料制度は今のままでよいのか?

 NHKの支払い率は2019年度で82.8%(前年度+0.7%、過去最高)で、受信料収入は7115億円(前年比−7億円)となっている。

 そんな中、26日に開かれた「公共放送の在り方に関する検討分科会」について、高市早苗総務大臣が
「テレビ離れが進む中で公共放送を社会全体でどのように支えていくのか、テレビを持たない方の同時配信の視聴ニーズにどのように対応していくべきか、
といった通信放送融合の時代を見据えた課題についても議論をいただいた」と説明。「先進諸国における公共放送の受信料制度について資料を用意させていただいたが、
私としてはこうした点も参考にしたい」とし、罰則のある海外の制度も参考にする考えを示している。

 また、NHKでは今年4月からネットでの同時配信や見逃し配信を行う『NHKプラス』を提供しているが、現状では受信契約している世帯しか登録ができないため、
ネットのみの利用者から受信料を徴収する“ネット受信料”についても検討課題として挙げられている。

(>>2-5あたりに続く)

 【映像】"NHKだけが映らないテレビ"開発者が生出演! 受信料契約の義務なし
 https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p2019

ABEMA TIMES 2020.07.01 08:00
https://times.abema.tv/posts/7060600