新型コロナウイルスの感染拡大で、最後まで残っていた東京のライブハウスやクラブなどへの休業要請が19日に解除された。新たな一歩を踏み出す店舗がある一方で、集客が見込めずに閉店を余儀なくされるケースも。元の姿を取り戻すには時間がかかりそうだ。

【写真】クラブ「三宿Web」の歴史を見守り続けてきた長沢剛史店長=19日夕、東京都世田谷区
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■営業再開でも、戻せない観客

 「今日はついに再開、めでたい日です。楽しんでいきましょう!」。

 休業要請が解かれた19日夜、ライブハウス「アルカフェ」(東京都杉並区)で、歌手の丸山晋平さん(36)が呼びかけると、約40平方メートルの店内を拍手が包んだ。客は座ったまま静かに体を揺らし、聴き入った。政府のガイドラインに従って観客はマスクを着用。席は約1メートルの間隔を空け、出演者との距離も広げた。定員は約30人だが8人まで絞った。

 13年前に創業したカフェ兼ライブハウス。アコースティックギターを中心としたライブが売りで、小規模ながら「居心地のよい空間」を演出してきた。

 新型コロナウイルスの影響で、4月11日からライブハウスとしての活動を自粛。カフェ営業を続けたが、4月の売り上げは4割減った。新たに有料ライブ配信を始めても、赤字ぎりぎりだった。

オーナーの佐々木典子さん(48)は「人のいないライブハウスは本当に寂しかった。この空間がいかに尊かったか実感した。お客さんには感謝しかないし、少しずつ日常を取り戻していきたい」。3年近く通う坂田澄恵さん(56)は約2カ月ぶりのライブ演奏に、「この会場だからこそ聞ける柔らかな音が大好き。音楽はライブが一番。これからもっと応援していきたい」と話した。

 一方で、約550人が入る新宿・歌舞伎町のライブハウス「新宿ロフト」は、出演者との日程調整などに時間がかかるため、しばらくは無観客でのライブ配信に頼らざるを得ない。

接待を伴う飲食店などで感染が確認されている場所柄、出演者も慎重になっているといい、加藤梅造社長は「ライブは出演者やイベントの主催者、観客がいないと成立しない。休業要請が解除されても、ライブ文化を取り戻せるのはずっと先の話だ」と声を落とす。

6/20(土) 17:57 朝日新聞
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