サガン鳥栖が、資金難によるチーム存続危機に立たされたことが18日、分かった。

ここ数年、攻撃的な経営で事業拡大を目指したが、逆にチーム経営を圧迫した。元スペイン代表FWフェルナンドトーレスを獲得するなどで話題は集めたが、スポンサー開拓には結びつかなかった。このほどJリーグに緊急事態を報告した。新型コロナウイルス感染拡大で他のクラブも経営圧迫されている現状で、Jリーグは「リーグ戦安定開催融資制度」適用などの解決策を模索している。

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鳥栖が資金難に陥ったのは、昨季からだった。ここ数年業績が悪く、昨年7月にJリーグが公開した18年度のクラブ決算ではJ1クラブ最多の5億8100万円の赤字。果敢な投資の一方で資金繰りに苦しみ、佐賀県などで薬局を経営する会社の経営者でもある竹原稔社長(59)が私財を投じて経営を維持してきた。その額は30億円を超えるともいわれる。当初は、今年初夏までは経営できるとの見通しでその間、新規のスポンサー探しに全力を注いだ。しかし、昨季前に背中スポンサーのcygames(サイゲームス)が離れ、今季直前に胸スポンサーのDHCが契約延長しないなど主力協賛会社が離れた。

Jリーグ幹部は「鳥栖が苦しんでいるとの報告は届いている。しかし今、新型コロナウイルスで経営が圧迫されているクラブは他にも多いので、リーグ戦安定開催融資制度を鳥栖1つのクラブにつぎ込むことは難しいかもしれない。まず理事会を通すことはできるかの問題もある。実行委員会でも相当な反対が予想される」と話した。

とはいえJリーグとして、鳥栖を消滅させるわけにはいかない。その救済策として、まず基金として約10億円を保有するリーグ戦安定開催融資制度を適用できるか模索。09年に資金難の大分がこの制度(当時は公式試合安定開催基金)を申請して6億円の融資を受け、その後チームを立て直した実績がある。しかし、今回は新型コロナウイルスの感染拡大で複数のクラブが経営圧迫されているため、融資できるかは未知数だ。

他には市民クラブへの移行が考えられるが、地元企業やサポーターで組織する持ち株会は不景気の現状で地元企業の賛同を得られるか予測できない。また、鳥栖がJリーグ子会社の「株式会社Jリーグ」に運営会社の株を譲渡し1年間、経営する案もある。経営しながら、チームを受け入れる企業などを探すことが考えられる。Jリーグの子会社が直接Jクラブの経営に携わることへの違和感があるため、株譲渡なしで「株式会社Jリーグ」の保証付きで、賛同するスポンサーを募っていくことなども方法の1つだ。

いずれにしても鳥栖の再建には障壁が高い。それでも、あるJクラブ幹部は「リーグとして鳥栖をつぶすわけにはいかないから、何らかの方策は出すはず。まずは今季、J1を鳥栖含めて18チームで乗り切ることが大事だから」と話した。

新型コロナウイルスの影響で、リーグ戦の再開日程が決まらないなど、当面の課題は山積み。世界保健機関(WHO)は「パンデミック(世界的大流行)」を表明し、東京五輪パラリンピックの中止、延期も取りざたされている中、Jリーグが打ち出す解決策に鳥栖の命運がかかっている。

3/19(木) 4:00配信
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