スポーツ経済 冷える春 Jリーグ公式戦延期


新型コロナウイルスの感染拡大が、国内スポーツ界に経済的な損失を与え始めている。

各競技団体が大会の中止や開催延期、無観客試合などの対応を余儀なくされ、
Jリーグなど興行でもあるプロスポーツはクラブ運営に大きな打撃も。クラブによっては経営難にも直面しかねない。


◆平日に試合 収入激減


「プロスポーツはビジネスの裾野が広い。飲食、宿泊、交通、警備関係などさまざまに支えられている。
(公式戦の)延期が持っている意味合いは重いと感じている」

18日再開を目標に中断していた公式戦を3月いっぱいまで延期する方針を決めたJリーグ。
村井満チェアマンは9日、苦渋の決断は地域経済にも影響を与えるとし、悲壮感をにじませた。

15日までの公式戦94試合の延期を決めた2月25日以降、事態の収束はいまだ見通せない。
再開予定の4月3日までに延期とした試合数は、69試合増えて計163試合に。

J1が第2〜6節の45試合、J2が第2〜7節の66試合、J3の第1〜4節の36試合とルヴァン・カップ16試合だ。

影響の一つが入場料収入の減少。今季は東京五輪期間に公式戦を中断するため、
週末を中心に組まれていた延期分は平日に振り替える方針。

J1クラブ関係者は「(週末開催に比べ)単純に来場者は半分になる」と頭を抱える。

このクラブの試算では、子ども料金などを加味した入場料単価を約1500円とし、1試合あたり1万5000人減で2000万円以上の損失に。
会場ではグッズや飲食の売り上げもあり、コンサルティング大手デロイトトーマツグループの調べでは入場料を含めた客単価はJ1平均で3687円。
入場者が同様に半減すれば、単純計算で1試合あたり数千万円の損失になる。

J1では2018年度、全18クラブの売上高のうち、入場料収入の割合はスポンサー収入の約45%に次ぐ約17%を占めた。
J2、J3など予算規模の小さなクラブによっては入場料収入は運転資金の柱の一つ。村井チェアマンが「無観客試合は最後の手段」とした理由の一つもそこにある。
ただ、状況がより深刻化すれば「ファンやサポーターと一緒に試合を運営することが、行政の判断によりできなくなるかも」と無観客試合も完全には排除しない。

地域密着を掲げ全国56クラブに拡大したJリーグは、下部組織やスクールの充実で裾野を広げてきた。長引く活動自粛はその運営にも影響を与える。
J3クラブの関係者は「スクールに力を入れているが、活動が止まっている。その会費などが入らないと死活問題だ。どうお金を集めるか、いろんな視点で考えないと」。

J1のFC東京の大金直樹社長は「キャッシュフロー上、厳しいクラブもあると聞いている」と明かす。

Jリーグは経営難のクラブに融資などができる「公式試合安定開催基金」や「大規模災害時補填(ほてん)」の活用も視野に、
村井チェアマンが「財務負担にならない配慮は必要」と個々に対応する方針を示す。

J1浦和の社長やJリーグ理事を務めたスポーツマネジメントが専門の広島経済大、藤口光紀教授は
「クラブは入場料収入が生命線。基金を取り崩すなどリーグの積極的なサポートは必要。
こんな時だからこそ、クラブも自治体と連携し、スポーツの力で何かできないか知恵を絞らないといけない」と話す。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/sports/list/202003/CK2020031302000133.html