自ら商売をしていて、もし家族に著名人がいたなら、宣伝に使わない手はない。実際にそうやっている著名人の家族は少なくないと容易に想像がつく。

1歩半先をゆくシュールで即興性の高い芸風で、今やその知名度・注目度は日本国内に留まらないお笑い芸人「ゆりやんレトリィバァ」。
実は彼女の実家も自営業だ。昨年は米国の人気オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント(America's Got Talent)」に、
角刈り頭に星条旗をデザインした露出度の多い水着でパフォーマンスを披露し、世界にその存在を印象づけた。
今年は年明けから自らの意思で、演劇修業のため単身ロサンゼルスへ渡った。何か大それたことをやってくれそうな予感がする。

奈良吉野でエッチング工房を営む、ゆりやんの父親もそんな娘の知名度を最大限に利用しているに違いないと、工房のHPにアクセスしてみたが、ゆりやんの「ゆ」の字もない。
工房の顔、代表者である父親の写真は後ろ斜め45度。控えめ過ぎて、逆にゆりやん張りのシュールなギャグかと思ってしまう。
その真相を究明すべく吉野町国栖(くず)地区にある工房を訪ねた。

エッチング幸房ソレイユの代表、吉田昌行さん(67)は、正真正銘のゆりやんレトリィバァの父親。
幸せが宿る作品づくりの場になればと工房を「幸房」と表記。
ソレイユはフランス語で太陽のこと。ワイルドな見た目とは裏腹に、その名付け方が物語るように、やさしく穏やかな雰囲気の方で、ゆりやんの芸風からは程遠いイメージだ。

吉田代表は、高校卒業後、大手鉄道会社へ就職。2005年、周囲の反対を押し切って30年以上勤めた鉄道会社を辞め、エッチング工房を開く。
ゆりやんが中学3年生の初秋だった。

「次の仕事の経営計画を練って満を持しての賢い脱サラではありません。
その頃、会社での仕事のモチベーションが下がり気味で、このままでは会社に迷惑をかけてしまうと思い、一念発起して子どもの頃から好きだったものづくりで事業をおこして家族を養うと決意しました。
もちろん経営のことなど分かりません。不安はもちろんありましたが、好きなことを仕事にできる喜びのほうが大きかったです」

この時は筆者も気づいていなかったが、後日取材で得た情報を整理していた際に、吉田代表の脱サラの選択こそが、お笑い芸人「ゆりやんレトリィバァ」を誕生させたのだと確信した。

会社勤めをしていた頃の帰宅は、いつも午後9時ごろ。食事しているところへパジャマ姿の2人の娘がやって来て、その日一日の出来事を話してくれるのが日課になっていた。
この頃からゆりやんは将来お笑い芸人になると家族に話していた。よくある思春期の娘の父親離れはなかったという。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200215-11003414-maidonans-life
2/15(土) 19:30配信

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