東京五輪・パラリンピック関連経費として、国が直近6年間で想定を上回る1兆600億円を支出したとする会計検査院の報告をめぐり、政府が対象事業を精査し、実際は約4分の1に当たる2669億円にとどまるとの調査結果をまとめたことが分かった。24日にも公表する。残りの約8千億円分の一部は「大会との関連性が比較的低い」としており、会計検査院の指摘を否定した形だ。

 先月、検査報告書を公表した会計検査院は、国が実施する大会関連施策の支出額を、平成25年度から30年度までで340事業、1兆600億円と算定した。

 政府はこの額は「大会との関連性の濃淡を整理せず、幅広く集計したものだ」と反論。今回の調査で(A)「大会の準備、運営等に特に資する事業」(65事業、2669億円)▽(B)「大会に直接資する金額を算出するのが困難な事業」(239事業、6835億円)▽(C)「大会との関連性が比較的低い事業」(42事業、1097億円)の3区分に分類した。

 調査では、Aにナショナルトレーニングセンターの拡充整備やパラリンピック競技大会開催準備などが含まれている。Cには障害者就業・生活支援センター事業やロシアにおける日本年事業などが挙げられ、東京大会の有無は直接的に関係ないと結論付けている。

 今回と同様の政府の反論は昨年も展開された。検査院が挙げた25〜29年度の金額(8011億円)のうち政府が認めた「大会直接支出」(1725億円)分は21%だったが、今回は25%に上昇。検査院は、経費の全体像を把握して公表するよう政府に求めている。

 ■「金のかかる五輪」払拭へ

 五輪の開催が財政を圧迫するとして立候補を断念する都市が相次ぐ中、「金のかかる五輪」のイメージ払拭は、国際オリンピック委員会(IOC)に与えられた使命だ。東京大会の経費を節約することは、五輪改革の推進に向けた試金石にも位置付けられている。

 しかし、人々の価値観やライフスタイルが多様化し、地球規模の問題にも対処しなければならない政府にとって、どこまでが五輪経費か否かを線引きするのが難しいのも事実だ。

 例えば、会計検査院が関連施策と指摘した障害者就業・生活支援センター事業や気象情報にかかる予測精度の向上及び充実事業は、一部は大会関連支出かもしれないが、社会的弱者の生活向上や減災の観点では今、取り組まなければならない施策だとも言える。

 1964年大会は当時の日本社会の状況を映し出す鏡だった。その意味で2020年大会は、人にも地球環境にも優しい社会の実現を目指す日本の努力を世界に示す機会でもある。

 五輪にかこつけて予算を取る事業を精査することが必要なのは言うまでもない。同時に、政府には五輪のレガシー(遺産)の効力を長期間継続するために、大会を機に行う事業の目的を丁寧に説明し、国民の理解を得る作業が求められている。(佐々木正明)


1/23(木) 22:54配信 産経新聞
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