突然のキス。
「びっくりしましたよ。キスまですんなよって」
大晦日のさいたまスーパーアリーナ。堀口恭司(29、ATT)は、「RIZIN.20」の解説席にいた。
朝倉海(26、トライフォース赤坂)を右のカウンターの一撃で倒してパウンドのラッシュでTKOしたマネル・ケイプ(26、アンゴラ)は、リングをかけおりて、なんと堀口にキスをしたのだ。
俺がTKOしてやったぜ、なのか。
次は俺が相手だぜ、なのか。キスの意味は不明だ。

本来は、このリングには堀口が立っているはずだった。だが、練習中の怪我で昨年11月に右膝の前十字靭帯の大手術を受けることになり、朝倉海との再戦が流れ、
急遽、代役出場となったケイプが、そのリベンジ相手を倒してしまったのだから、堀口は、さぞ複雑な心境だったに違いない……と小さな脳みそを使って想像していた。
だが、堀口は常識の物差しでは計れない格闘家だった。
新年を明けて、東京・八重洲のイタリアンレストランで会った堀口は、その仮説を笑い飛ばした。

「面白くなってきたじゃないですか。この展開の方が盛り上がるかなと。どうせ最後は僕がベルトを巻くんで。朝倉海に勝ってくれと願っていた? そんなのないっす(笑)。
次に海君とやって終わりじゃストーリーとして面白くないでしょう」
朝倉海の敗戦は想定内だったという。
「試合前からケイプが勝つ可能性があると思っていました。ケイプのトリッキーな動きに対応できずに海君がパンチをもらうなと。
もちろん海君のパンチが当たるとケイプもぐらっとなるでしょうが、パンチを当てるまでの動きがトリッキーすぎて読めないんじゃないかなと思っていました。結局、そこでやられちゃっていましたね。
海君は、前回、ケイプとの試合を僅差で勝ったことで、今回追われる立場になった。そこで動きもガチガチになっていた。置かれた立場がメンタルに影響するってありますよね。僕はまったくないですが(笑)」
ケイプは、頻繁に左構え、右構えとスイッチしながら、予測不能の攻撃を仕掛けてきた。
そのスタイルと、勝者の立場で再戦を受ける朝倉海のこの試合に挑むメンタルが影響することを堀口は予期していたのである。

堀口は、2017年の大晦日にケイプに肩固めで一本勝ちしている。その堀口は、昨年8月に名古屋で朝倉海に“番狂わせ”を許してKO負け、そして朝倉海がケイプに負けるという複雑なトライアングル。
格闘技界では、よくある相性の「グーチョキパー」である。だが、堀口は「確かに格闘技には相性はあります。
でも、相性より、そのときのコンディションがどうだったか、で巡り合わせは変わってきますからね」という。

堀口は朝倉海へのリベンジに照準を絞っていた。その朝倉海が負け、堀口が返上したRIZINバンタム級のベルトはケイプに渡った。復帰後のターゲットは変わるのか。
「まず海君を倒してから次にケイプ。忙しくなってきましたね」
堀口の考えは変わっていなかった。
「ベルトを持っているのはケイプだけど、そこは関係ない。最初は、海君とやんないと世間は“堀口は何やってんの?”ってなりません? 自分もぶっ飛ばされたままで終わりたくない。
しっかりと倒して、その後にベルトを取り戻していけばいい。ケイプは長くベルトを持っている器じゃないので(笑)。もしかしたら自分とやるまでにベルトを失っている可能性もあるかもしれないけど、そのときベルトを持っている奴とやるだけでしょ」

まずケイプは「RIZINバンタム級王座挑戦者決定戦」で石渡伸太郎(CAVE)を判定で破った扇久保博正(パラエストラ松戸)と防衛戦を行わねばならない。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200107-00010000-wordleafs-fight
1/7(火) 6:03配信