プロサッカー選手は認知症など神経変性疾患で死亡するリスクが一般人より3倍以上も高いとする研究結果を、英グラスゴー大などの研究チームがまとめた。米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された。近年、激しい接触や頭部への打撃が繰り返されるスポーツが、脳に長期的な影響を与えるかどうかを確かめる研究が進んでいる。サッカーでは、ヘディングの影響が懸念されており、海外では規制する動きもある。

 研究チームは、1900〜76年に生まれたスコットランドの元プロサッカー選手7676人について、年齢構成などを加味した2万人以上の一般人と比べた。

 対象とした元選手のうち、すでに死亡していた1180人の死因を分析すると、神経変性疾患で死亡するリスクは一般人の3・5倍だった。病気別では、アルツハイマー病で5・1倍、アルツハイマー以外の認知症で3・5倍、パーキンソン病で2・2倍だった。一方、肺がんや心筋梗塞こうそくなどのリスクは一般人より低かった。

 東京医科歯科大の成相直なりあいただし准教授(脳神経外科)は「運動の効果で一般人よりも長生きすることで、神経変性疾患にかかるリスクが高まった可能性もある」と指摘している。

 米国サッカー協会は、脳への悪影響を避けるため、10歳以下のヘディングを全面的に禁止している。ただ、成相准教授によると、現時点でヘディングと脳の病気との関係を示す科学的な証拠はないという。

 日本臨床スポーツ医学会の脳神経外科部会長を務める独協医大の荻野雅宏准教授は「海外でも注目を集めている結果だが、過度に不安になる必要はない。ヘディングが脳に与える影響について、日本でも議論を始めるきっかけにしてほしい」と話している。

2020/01/06 17:16読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20200106-OYT1T50186/