「審査員」を軸に見るM-1
 2019年のM−1グランプリは、ミルクボーイの圧勝だった。

 彼らが見せた漫才は強く人々を惹きつけるものだった。

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 ただ、彼らがTVタレントとして、今後どれだけ活躍できるかは未知数であるし、受賞直後の露出をみると、去年の霜降り明星ほどの一気にスターダムにのしあがるタイプではなさそうである。

 M−1グランプリは、新しいTVタレントを誕生させるが、純粋に若手漫才師のトップを決める大会でもある。今回の彼らの漫才は、すさまじくレベルの高いものだった。漫才師キャラよりも漫才そのものの印象が強い残る大会だった。

 今年は、あとですべての漫才セリフを引き写しながらM−1を見直したので、いろいろ気がついたことがある。

 審査員の評価から見直してみると、また別の角度から漫才を見直すことができる。

 決勝ラウンドそれぞれの漫才の評価点を比べながら、2019年の審査員の傾向と好き嫌いをまとめておきたい。

ニューヨーク、かまいたち「13点差」の意味
 M−1グランプリの審査のむずかしさは、登場順にある。

 審査員としては10組の漫才師をできるかぎり傾斜をつけて採点したいだろう。10組をきちんとランキングしたいはずである。

 ただ最初に出る二組があまりに差があったり、あとから予想もしないレベルの高い漫才が出現したりすると、ときにうまく配点できなかったりする。

 2019年で言えば、最初に出てきたニューヨークが結果的には最下位10位となり、次に出てきたかまいたちが2位になるという出順だった。この2組の点差のあいだに、あとの8組が入ったのだ。あまり点差をつけてないと、あとの点付けがむずかしくなる。

 松本人志はニューヨークに82点、かまいたちに95点と13点差をつけて採点した。さすがというか一瞬で両者の差を見抜き、残りはあいだに入るだろうという判断だったのだろう。

 他の審査員はもう少し狭かった。

 中川家の礼二が94点と88点で6点差、オール巨人も93点と87点で6点差だった。

 立川志らく95点と90点、上沼恵美子95点と90点、サンドウィッチマン富澤93点と88点とこの3人が5点差。

 ナイツ塙は95点と91点と4点差だった。

 ただ、ニューヨークとかまいたちの点差が狭いのが間違っていたというわけではない。7人の審査員合計で順位が決まるから、結果から逆に判断するのは間違っている。でも松本人志の「13点差」はちょっとすごい。結果としてこの点差をつけたことで、知らず知らずのうちに松本が審査を引っ張っていくことになっていた。

 各審査員は、それぞれのコンビをどういう順番で点を付けていたのか。

 松本人志が途中、“見取り図”の採点について「和牛とからし蓮根のあいだかなとおもって91点にしました」と言ってたように、それぞれの審査員のなかで、どれが上かという点数の付け方をしているはずである。それぞれ各コンビを何番としてランキングしていたかを見ていく。

 最終の順位順で並べる。

 上位3組が第二ステージに進んだが、最終結果も第一ステージの並び順どおりだった。

 1位のミルクボーイ。

 全審査員が1番の点数を付けた。同点1番を付けたコンビもいない。文句なく圧倒的な1位だった。だからM−1史上最高得点となった。そのままセカンドステージも走りきった。圧勝だった。

 2位は、かまいたち。

 それぞれの審査員内で何番の順位だったかを並べてみる。

 オール巨人3番、ナイツ塙3番、立川志らく3番、サンドウィッチマン富澤3番、中川家礼二2番、松本人志2番、上沼恵美子3番。

 じつは3番手の得点を付けている審査員が多かった2番は意見が分かれたのだ。そのぶん安定して3番評価が多かったかまいたちが2位に入った。

 とてつもなく面白い漫才だったが、「かまいたち」という存在じたいがかなりテレビで見かける売れっ子タレントであり、新鮮さには欠ける。だから、2番ではなく3番にしたのではないか、とおもう。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191227-00069508-gendaibiz-ent