デスク レース史上最多11頭のGI馬が集結した第64回有馬記念は、2番人気の5歳牝馬リスグラシューが、2着の3番人気サートゥルナーリアに5馬身差をつけて圧勝。引退レースで鮮やかな競馬を披露して有終の美を飾った。最後の直線で見せた末脚は次元の違うものだったね。今回は現地で観戦した関東競馬エイトの野田慶一郎トラックマン(TM)に登場してもらおう。君が本命にしたスワーヴリチャードは5番人気で12着か…。まさに反省会になったね。君の本命馬はあとにして、まずは9着と大敗を喫したアーモンドアイの敗因を聞こうかな。読者もそこを一番知りたいはずだからね。

野田TM これまでは上がりの速い高速馬場でしか走ったことがなく、今まで経験したことのないラスト3ハロンが極端にかかる究極のスタミナ比べに対応できなかった。それくらいしか考えられません。中団の外で折り合い、4コーナー手前からのスムーズに上がってきたときは「さすがだな」と思ったんですが、直線で全くはじけなかったですね。

高尾TM ルメール騎手は「スタンド前で冷静に走れなかった。2500メートルだと、リラックスして走れないとアーモンドアイでも疲れてしまいます」って話してましたよ。

野田TM 見た目には全然、力んでいるように見えなかったけどなあ。折り合って普通に競馬をしているように見えたけど、外から見ているだけでは分からないもんだね。アーモンドアイは万能ではなかった、ということでしょうか。

デスク それにしても、勝ったリスグラシューの末脚は強烈だったね。

野田TM 鞍上のレーン騎手がインでじっくり我慢。他馬が早めに動くところでワンテンポ待ち、残り3ハロン過ぎから進出して内から外へスムーズにさばけましたね。ギリギリまで脚がたまっていたとはいえ、追い出されてからの迫力は他馬をはるかにしのぐものでした。文句なしの圧勝です。宝塚記念では前半で掛かりながら圧勝したように、スタミナがあるということ。有馬記念ではスタミナが必要なレースになって、強さがより際立ちましたね。ハーツクライ産駒は古馬になっても成長力があります。うちのハーツは全く駄目だったけど…。

デスク 「うちのハーツ」って、本命にしたスワーヴリチャードのこと?

野田TM はい…。鞍上が前半に気合を付けて押していったらまともに引っ掛かってしまいました。あれでは息が入らず勝負になりません。さすがに最後は止まってしまいました。目に見えない疲れもあったかも…。

デスク 2着はアーモンドアイと同じロードカナロア産駒のサートゥルナーリア。

野田TM 東京での日本ダービーと秋の天皇賞はレースの直前にテンションが上がって力を発揮できなかったけど、今回は返し馬やスタート前の輪乗りでも落ち着いていました。折り合いもばっちりで、前走より競馬ぶりは大幅に良化していましたよ。直線で外から一旦抜け出したところを、さらに外から勝ち馬にかわされたものの内容は上々。確実に進化しています。僕はロードカナロア産駒は本質的に距離がもたないと思っているんですが、今回のレースを見て、この馬は意外に引き出しがあるなって思いました。控えて味のある競馬ができたのは収穫です。来年は2000メートル前後のGI、春なら大阪杯かドバイに行くんでしょうね。

デスク 3着はワールドプレミア。パドックでは出走メンバーで一番テンションが高く、返し馬でも暴走気味で武豊騎手が必死に抑えているように見えたけど。

野田TM テンションが高かったこともあって出遅れたんでしょう。後方から無理せず折り合いに専念し、直線は一気に外から伸びましたね。ペース次第でどんな競馬でもできる自在性があるし、スタミナも豊富。今回は流れも向きました。

デスク 4着はフィエールマン。

野田TM 道中はアーモンドアイの直後。4コーナー手前からまくって目標の相手はかわしたけど…。さらに後ろからまとめて差されたのは展開のアヤですね。

デスク 5着のキセキも出遅れた。ムーア騎手が押しても行かなかったね。

野田TM それだけスタート直後からペースが速かったということ。結果的にはハイペースに巻き込まれず正解でした。後方でそのまま運び、直線はジリジリながらも外から押し上げてきましたね。ただ、一気にまくれる脚はないので、本来は前で競馬をした方がいい馬。結果論としてはまずまずの着順ですが、自分の競馬ができなかったのは確かです。

デスク 6着は14番人気のシュヴァルグラン。引退レースだった。

野田TM レースは後方から。勝負どころですっと押し上げられなかったけど、直線は持ち前のスタミナを生かして上がってきましたね。

https://race.sanspo.com/keiba/news/20191222/etc19122218010007-n1.html