スペインの名門バルセロナのように、ボールを持って攻め続けるポゼッションサッカーの確立。神戸の「バルサ化」2年目は、8位に終わった。大型補強も敢行したが、2度の監督交代で理想的な成長曲線を描けず、安定感を欠いた。(有島弘記)

 「目標を言います。ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)出場」

 神戸のチーム総責任者、三浦スポーツダイレクター(SD)は2019年シーズンの新体制発表で、そう豪語した。バルサ化を象徴するイニエスタが顔となる陣容に、元スペイン代表ビジャ、日本代表経験者の山口、西らが加入。親会社楽天の資金力を生かした補強は、期待を抱かせるのに十分だった。

 ところが、結果はACL出場圏の3位と勝ち点16差の8位。2度の監督交代に伴うリーグ7連敗でつまずいた。

 3勝1分け3敗と成績が五分の4月、昨秋就任のリージョ氏が電撃辞任。後を受けた吉田氏を経て、6月にフィンク氏が指揮官となった。チームは混迷を極め、イニエスタも「監督の交代で難しい状況があった。高いレベルを維持できなかった」と嘆くしかなかった。

 今季のJ1を制した横浜Mも神戸と同じく昨季からポゼッションサッカーに移行したが、両クラブには明確な違いがあった。継続性。つまり、戦術の熟成度だ。

 神戸は2年間で延べ5人が監督を務め、横浜Mはオーストラリア人のポステコグルー監督に指揮を託し続けた。得失点差の推移を見ると、その差は歴然。神戸は昨季の「マイナス7」から「2」に改善させた一方、横浜Mは「0」から一気に「30」まで伸ばした。

 とはいえ、神戸は夏の移籍市場でベルギー代表フェルマーレンや元日本代表酒井らを獲得し、不可欠な戦力として機能。イニエスタがポゼッションについて「自分の感覚としては良くなっている」と話した通り、神戸はリーグ戦の最後を3連勝で締めた。

 リーグ最終節の前日、フィンク監督自ら来季のチーム像を語り始めた。強調したのが「ベース」や「継続」。監督人事や補強の決定も、揺るがぬ理念があってこそ。フロントの的確なチーム設計、何より「我慢」の大切さを、今季の年間王者が教えてくれている。

12/12(木) 18:00配信
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