曲の長さ&曲順のトレンド、2019年にヒットしたアルバムから見えること
2019.11.15 THE MAGAZINE Powered by TuneCore Japan
https://magazine.tunecore.co.jp/inspirations/35132/

日々、アーティストの方々と接していると、よく聞かれることがあります。
「今って、短い曲の方がいいんですよね?」
たしかに、特にUSのチャートを見ると、4分以上ある曲は非常に少ない状況になりつつあり、それを裏付けるレポートもあります。

(中略)

そんな今日のトレンドのひとつに、「曲が短くなっている」というファクトがあるわけです。ストリーミングサービスの1再生カウントが30秒という基準に対し、スキップレートをいかに下げるか、1再生カウントをいかに稼ぐかに、何年も前から特にストリーミングが普及した地域においてアーティスト(のビシネス)サイドは神経を注いできました。
そこで今回、2019年現在、グローバルに商業的に成功している作品において、複数の曲がパッケージされるアルバム/EPといったフォーマットにおける楽曲の長さと曲順をオーバービューしてみようと思います。
(中略)

■3つの作品から見る楽曲の時間
ということで、先日突如リリースされたKanye Westの『Jesus Is King』と、2019年を象徴する作品だったといっても過言ではないBillie Eilishの『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』、そして戦略的なアプローチを常に仕掛けるTaylor Swiftの『Lover』という、今年リリースされたヒット3作品をとりあげてみます。

(中略)

これらアルバムのトータルタイムを曲数で割った平均タイムは、

Kanye West 『Jesus Is King』 ― 2:27

Billie Eilish 『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』 ― 3:03

Taylor Swift 『Lover』 ― 3:25

となっています。Kanye Westが特に顕著ですが前半には相対的に短めの楽曲が集中している傾向が見てとれます。

■国内のヒット作品はどうなっているか

参考までに、国内の作品も見てみます。
2019年に国内のストリーミングチャートで強い存在感を示した、Official髭男dism『Traveler』、あいみょん『瞬間的シックスセンス』、King Gnu『Sympa』をとりあげてみましょう。

(中略)

King Gnuは海外のトレンドに近いアプローチになっている一方、Official髭男dismとあいみょんは4分以上の曲も高い割合を示しています。裏返すと、まだ日本はそこまで短尺の曲でなくてもヒットする状況にあるということが分かります。国内ストリーミングチャートを席巻しているOfficial髭男dismのシングル「Pretender」は12曲目に配置されており、そこも”シングルカットなどベストな曲をアルバムの前半に集中させる”という最近のグローバルセオリーには当てはまらない形となっています。

また上記USの3作と同様に、これらアルバムのトータルタイムを曲数で割った平均タイムは、

Official髭男dism『Traveler』 ― 3:57

あいみょん『瞬間的シックスセンス』 ― 4:03

King Gnu『Sympa』 ― 2:41

となっています。上記にあげた6つの作品においては、もちろん様々な要素や作品としての芸術性を加味、試行錯誤し、このような曲の長さ、曲順で構成されていると思われます。その上で、リスナー側もリリースする側も、プラットフォームのメインがストリーミングに移行しつつあり、アルバムというフォーマット自体の存在意義も曖昧になってきている中、敢えて数字だけで見てみると上記のような事実が浮かび上がってきます。

6作品を比較したグラフはこちら。
曲の長さ&曲順のトレンド、2019年にヒットしたアルバムから見えること
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