2019年11月9日 9:32

「つげ義春全集」の刊行を決定したトークライブが、去る11月8日に東京・六本木ヒルズ 森タワーのアカデミーヒルズにて開催。押井守と石川浩司が登壇した。

本イベントは、つげ義春の全集が来春に講談社より刊行されることに併せて始動した「つげプロジェクト」の一環として実施されたもので、トークの司会・進行は「ひなびた温泉研究所」の岩本薫が務めた。つげのファンとして知られる3人は、さまざまな切り口からつげ作品とつげという作家の特異性について90分以上にわたりトークを繰り広げた。

まずは忘れられない“つげ体験”のエピソードを披露。ガロ(青林堂)の創刊号から作品を見てきたという押井は、「高校生ぐらいだったと思うんですけど、(ガロの中でも)つげさんには強烈な違和感があった。『面白かった』とかそういう感じとは違いますよ。でも70年代前後って、妙に間延びした部分と切迫した部分が共存している時代で。あの時代だったからこそ成立したんだと思います」と振り返る。さらに「つげさんのマンガって、自分の中での置き場所が変わらないんです。あれから40年以上経ってるけど、僕の目から見たら全然変わってないですから。珍しい人ですね」と語った。

一方の石川は「中高生の頃に古本屋で見かけたのがきっかけ。当時は群馬にいて、マンガといえば赤塚不二夫、藤子不二雄、手塚治虫しか目に入らない状態で、アンダーグラウンドな作品を見る機会はほぼなかった。でも偶然古本屋で見かけて、『これは今まで見たことないものだ!』ってなって」とつげ作品との出会いを明かす。また「初めて、親が普通に見せてくれるものじゃないものを見れた。親は陰陽の陽しか見せてくれないけど、陰の部分をバッと見せられたのがショッキングで。こういう世界もあるんよなって」と、つげ作品が当時の自分にどれだけのインパクトを与えたかを述べた。

続くトークテーマは“名バイプレーヤー”。押井が「つげさんのマンガって主役は目立たないんですよ。基本的に主人公は何もしないですから」と語ると、石川も「パッとしない主人公が多いですからね」と同意する。主人公よりも、主人公が出会う脇役が面白いと話す押井は、「沼」「紅い花」「もっきり屋の少女」といった作品に繰り返し登場する“おかっぱの少女”が気になる存在だと吐露。「ちょっと特異な存在。繰り返し出てくるキャラクターというのは何かがあるんでしょうね。ほかのアニメでも映画でも、特異な存在が少女の形をしているのは伝統ですが、不思議なものだったり理解できないもの、美しいもののイメージなんでしょう。
ご本人が意識されているかわかりませんが、頭の中に住んでいる女の子がひょっこり顔を出すんですね。まあカッコよく言っちゃえばアニマ」と持論を展開する。さらに「男はどうしても女性に対して公平になれない。例えば石ノ森章太郎さんはずっとヒロインがお姉さんで、ある時期から奥さんに変わるんです。しかもどこで変わったかもわかる。それは絵の世界、映像の世界では起きちゃうことなんですよ」と続けた。

また“おかっぱの少女”とは対象的に、「ねじ式」や「ゲンセンカン主人」に登場する肉感的な中年女性についても話が及ぶ。押井は「極端ですよね(笑)。でも無意識のうちにそういうタイプの人を選んでるんでしょうね。生活感のある太めのおばさん、めちゃくちゃエロいんですけどね」と話すと、石川も「『夢の散歩』に出てくるおばさんはエロい。でも顔はわからないんですよね、身体だけで」と回想する。さらに「チーコ」に出てくる女性が好きだという押井は「つげさんの中では珍しいキャラですよね。10代の頃に読んだけど、『ソーセージともやしを炒めて食べてね』っていうセリフが忘れられない(笑)」と楽しそうに話した。


     ===== 後略 =====
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