【「表と裏」の法律知識】#10

 昨年の日大アメフト部の騒動に続き、今度は慶応大アメフト部も無期限活動自粛を発表しました。今回は、部員による女子風呂の盗撮・拡散が原因とのことです。

 盗撮は各都道府県の迷惑防止条例や軽犯罪法に違反する行為です。またカメラを設置するために女子風呂に侵入する行為をとらえて建造物侵入罪として立件されることもあります。

 大学側が無期限活動自粛を発表したり、犯行に至った部員が退部になっているという報道からすれば、犯罪自体は部員も認めているのではないかと思います。

 となると、今後この慶応大アメフト部員は逮捕される流れかな、とも思いますが、実際は恐らく逮捕にはならないと思います。

 そう考えるのは、部員がいわゆる「上級国民」にあたると思われるためです。

 池袋暴走事故以降、「上級国民」=社会的な地位、家庭、収入のある人は逮捕されないという話題がネットを賑わせました。弁護士の感覚としてはこれは真実だと思います。

 逮捕は、被疑者に逃亡や証拠隠滅の可能性がある場合になされます。しかし、「上級国民」の場合、地位、家庭、所有不動産、資産などをかなぐり捨てて逃亡することは考えにくいですし、実際に証拠隠滅に及んで、わざわざ逮捕されるようなことはしないだろうという信頼もあります。それゆえ、「上級国民」は逮捕されないのです。

 今回の場合、大学側が犯罪事実を公表することもせず、部員を告発することもしていない状況を考えると、「上級国民」であろう慶応大生の部員だけでなく、「上級国民」集団である慶応大学側による組織的な犯罪隠蔽も疑われる状況にあるのではないかと思います。

 社会的地位のある「上級国民」に忖度しているという疑念を抱かれないよう、警察にはしっかりと捜査してもらいたいものです。

(橋裕樹/弁護士)

10/27(日) 9:26配信 日刊ゲンダイ
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