女優「のん」。ミュージシャン「のん」。アーティスト(自称・創作あーちすと)「のん」。この夏は、一連の芸能ニュースの中でその名を取り沙汰されたが、本人は周囲のあれこれを意に介さず、まっすぐに前を向いている。
「かっこよくありたい」。透明感のある佇まいはそのままに、熱いイマジネーションの泉を抱え、自分はどうあるべきか、どう見せるべきかを問い続けてきた彼女の、今の想いとは。
(取材・文:山野井春絵/撮影:平岩享/Yahoo!ニュース 特集編集部)

「のんが演じる意味」を見せたい
「過密スケジュールが続いて、肉体的に疲労することもありますけど、毎日が楽しくて仕方ない。私にとっては、仕事が一番『生きてる!』と思える時間なんです。
(会社が)一人になって、責任感も芽生えたことが、よりいっそうモチベーションになっているところもあります」

のん、26歳。見た目は年相応で、むしろもっと若く見える瞬間もある。しかし、彼女が放つオーラと風格は、特殊なものだ。
童顔で、ほんわかしたムードを持ちながら、だまっていても内包するパワーが滲み出る。
話し方はゆっくりで、朴訥としながらも、言葉の選びかた一つひとつに強い意思を感じさせる。

今、いくつかの芸能ニュースの影響により、芸能界の構図からメディアの在り方そのものまでが問われている。
この問題についてのオピニオンには、テレビドラマから「消えている」のんへの言及も多く、今もって彼女の存在感の大きさを知らしめている。

個人事務所を立ち上げ、セルフプロデュースを始めたのが2016年。そこからは自分自身で仕事を吟味し、音楽とアート活動も精力的に行ってきた。

すべての仕事選びの基準は、「のんがやる意味」だという。

「どんな仕事も、自分がやることで面白いものになるかどうか。また、見ている人にどういう影響を与えることができるか、ということを考えます。
のんが打ち出すものと、求められているものを、一番よいカタチで合致させたい。そこを大切にしながら、『のんがやる意味』をいつでも見いだせるようにしたいんです」

彼女が「のん」と言うとき、それは一人称ではなく、三人称だ。

女優、アーティストとしての「のん」をプロデュースする「私」。「私」はいつでも「のん」を客観視している。
段取りやどうやって映っているかをきちんと把握しながらも、「一番輝く瞬間」を判断するためだという。

「演じる人がいい匂いを嗅いでいるのを画面越しに感じると、その匂いを想像しますよね。たとえば、ラーメンを食べるシーンとか。
大好きな美味しいラーメンを目の前にしたら体がどういう状態になっているか? 自分の記憶の中の皮膚感を使って感情を動かして、役を作り込みます。
そこに、2割の冷静な自分が、どう動いたらいいかを判断して発想する。『のんだから、こう演じる』ということ、そして『のんが演じる意味』を見せたいという気持ちが強いです」

朝ドラから5年、ずいぶん丸くなった

「自由に自己表現ができる自分でありたい」――。

10代の終わりに朝ドラのヒロインとしてブレイクし、早々に人気女優の礎を築いたのんは、その後の活動について、「どうあるべきか」を自らに問い続けていた。

「朝ドラのヒロイン役は、私の基盤をつくってくれた大きな仕事でした。ヒロインの性格も、わりと自分に近い部分があるかもしれません。
多くの方に名前を知っていただいて、あの直後から、ああ、私はしっかりしなくちゃいけない、と思っていました。
どんな自分を見てもらいたいのか、どんな自分で楽しませるのか、きちんと“自分で”考えておきたい、と。
その時のことを思い返してみると、ものすごく気を張っていましたね、本当に、張りつめてました」

https://news.yahoo.co.jp/feature/1406

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