7/19(金) 18:45配信
ダイヤモンド・オンライン
悲劇の「京アニ」はどれだけ凄いスタジオだったか

放火事件があったアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオ=18日午後、京都市伏見区 Photo:JIJI
● 企業規模以上に圧倒的な 存在感を持つアニメ集団

 18日にアニメ制作会社・京都アニメーションの制作拠点(京都市伏見区)で発生した放火事件は、死者33人を出す大惨事となった。誰もが目を覆う痛ましい事件であり、特にアニメ業界の関係者はとてつもないショックを感じている。

 一般紙などで「業界の準大手」と紹介されるように、京アニは制作キャパシティという点では東映アニメーションやサンライズといった最大手より一段小さな存在だ。アニメスタジオでは通常「制作ライン」と呼ばれるチームが責任を持って各作品を制作していく。最大で十数ラインを持ち、大きな生産キャパシティを有するスタジオもある。

 従業員数165人(公式サイト上の人数)の京アニは、最大手の東映アニメの数分の1の規模だ。ところが、アニメファンにおける存在感はまったく引けを取らない。この規模から生み出される作品群は、どれも圧倒的なクオリティを持つからだ。出す作品、出す作品、どれもがコンスタントに高い水準を維持している。京アニへの信頼度の高さは、たとえば新作発表の際に制作が京アニと発表されるだけでファンが歓喜する、といったことにも現れている。

 新進と形容されることも多い京アニだが、その歴史は実は1981年まで辿れる老舗である。しかし2000年代初頭までは、元請けスタジオから制作の一部を再受注する下請けの仕事が多かった。それが『AIR』といったコアファン向け作品の元請けを経て、やがて2006年に大躍進する。代表作『涼宮ハルヒの憂鬱』を発表したのだ。ライトノベル作家・谷川流氏のSF学園ものを原作とした同作は、深夜帯かつ地上波独立局で放送という静かなスタートだった。ところが凝った設定と丁寧な作画が瞬く間にアニメファンの心を掴み、一大ブームを築いていく。

 なかでもエンディングのキャラクターたちによるダンスシーンが出色で、ニコニコ動画などにファンが真似て踊ってみせる動画が多数投稿され盛り上がった。当時勃興してきたインターネットのファンコミュニティと連動し、公式サイトなどを通じてファンに謎解きを挑むといった仕掛けの効果もあった。現在では一般的になった、SNSを通してアニメとファンの密接な繋がりを作る事例としては先駆といえる。

 高いクオリティと表現されることの多い京アニの映像は、視覚面では作画と呼ばれるアニメーターの絵を描く工程に支えられている。アニメは少しずつ異なる静止画を連続させることで、動いているように見せている。リアルに自然に動かすには、膨大な枚数の静止画すべてに細かく手を入れなくてはならない。これが作画工程であり、アニメーターの手間と根気、そしてセンスが求められる。

 京アニは『ハルヒ』以降も『けいおん!』『Free!』『響け!ユーフォニアム』といった、青春もの・学園もののヒット作を連発。これらがファンを魅了した要因は、日常的なストーリーの中での細やかな表情や動作を、高い作画技術で実現してみせたからだ。もちろんアニメの魅力は作画だけではないが、これが京アニの大きな特長のひとつであったことは間違いないだろう。

● 正社員採用、社宅もあり 人づくりは作品づくり

 なぜ京アニは、こんなに高いクオリティを維持できるのか。そのひとつにアニメーターの人材育成に積極的に投資してきたことがあるのでないか。その最たる例が、業界でも早くからアニメーターを正社員などとして安定的に雇用してきたことだ。

 アニメ業界は、非正規社員で働く人がおよそ8割を占める。全産業平均では4割程度だから、アニメ業界の非正規率は非常に高い。もちろんフリーランスなどの形で柔軟に働きたい人もいる。しかし安定してスキルとキャリアを向上させたい人、とりわけエントリークラスのアニメーターにとっては、なかなか厳しい現実だ。若い駆け出しアニメーターは、雇用が不安定で収入が低く、労働時間も長い下積みが続く。

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