中島が攻め残ったときの守備対応
 しかし、その問題が完全に解決されていたかといえば、そうではなかった。

 いくつかのシーンにおいて、次の試合に向けて守備戦術の修正を図らなければならない点が浮上している。それが、相手のカウンターアタックを受けたとき、あるいは縦に速い攻撃を受けたときの左サイドの守備対応だ。

 前半8分、13分、16分、18分に迎えたピンチは、ウルグアイの素早い縦攻撃から日本の左サイドを破られたシーンである。それぞれシチュエーションは異なるが、いずれのシーンにおいても、中島はディフェンスに戻れていない。

 とはいえ、中島を生かすには、常に守備を考えてポジショニングさせても意味はない。彼が持つ特別な能力を半減させるからだ。問題は、彼が戻れない場合の対応を、チーム戦術として整理できていない点にある。

 たとえばレアル・マドリードの場合、左サイドバックのマルセロが前線に攻め残ったときに左のスペースを突かれたら、左センターバックのセルヒオ・ラモスがスライドしてそのスペースを埋め、アンカーのカゼミーロが中央に落ちてセルヒオ・ラモスが空けたスペースを埋めるという守備方法で対応する。

 日本の場合、中島はマルセロより1列前のポジションなので、ダブルボランチが横にスライドし、逆サイドウイングが下がりながら内に絞る方法もある。重要なことは、チームとして中島が攻め残りしたときの守備対応を整理しておくことだ。これは、次のエクアドル戦に向けた重要な修正ポイントになる。

 試合運びについて大きな課題を残した点も見逃せない。

 初キャップの選手を含め、若く経験の少ない選手が多いゆえ、リードした直後に追いつかれてしまうことは仕方のない部分もある。それだけに、2−1とリードしたあと、ほぼ一方的に押し込まれてしまった60分以降の試合運びについては、指揮官のベンチワークの問題が問われて然るべきだ。

 2−2に追いつかれた66分のシーンを含め、終了までの約30分間は、いつウルグアイに逆転ゴールが生まれてもおかしくない戦況が続いた。それを最後まで耐え抜いたとしてポジティブに見るか、それとも危機感を持つかで、成長の速度は大きく変わる。当然、指揮官なら後者であるべきだ。

 もっとも、これは森保監督が今大会をどのような目的意識で臨んでいるかという根本的な話にもつながってくる。勝利と経験が4対6、もしくは3対7の割合であるとしたら、たしかにこの2試合のスタメン選びと試合中のベンチワークに頷ける部分もある。

 ただ、東京五輪本番に向けた実戦経験を求められるのは選手だけではない。国際経験の少ない森保監督もそれは同じなはずで、コパ・アメリカという真剣勝負の場で本番に向けた自分自身のテストをしなければ、再びアジアカップと同じようなぶっつけ本番の采配になってしまうことは火を見るより明らかだ。

 引き続き、森保監督の采配に注視する必要がありそうだ。

7/1(月) 11:30
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamaatsushi/20190701-00132331/