グループリーグ初戦のチリ戦で森保ジャパンが0―4の大敗を喫した瞬間、日本国内のテレビ局関係者は、胸をなで下ろしたことだろう。

 南米選手権(コパ・アメリカ)は、インターネットによるスポーツ中継動画配信サービスのDAZNが全試合を独占配信する権利を持っている。地上波、BSなどテレビで日本代表の試合は見られず、これは2010年1月6日のアジア杯予選イエメン戦(サヌア)以来の珍事となった。

■大会直前に久保のレアル入りが発表される

「放送しないのに勝ち上がり、話題になれば『民放やNHKは何をしているんだ? 国民的関心事を放送しないのはけしからん』と批判され、NHKの場合は受信料不払いの悪しき流れにもなりかねない」(放送関係者)

 ところが大会前にチーム最年少の18歳MF久保建英のスペインの強豪レアル・マドリード入りが発表され、そこからグングンとコパへの関心が高まり、2戦目に優勝候補ウルグアイとガップリ四つの戦いを見せ、2―2で勝ち点1をゲットすると「DAZNでしか見られない……民放やNHKは怠慢じゃないのか」という声が噴出してきた。「今回のコパのDAZN独占配信は、大会後にレアル入りする久保の動向が大きく関係した」とサッカー関係者が続ける。

「2020年東京五輪を横目でにらみつつ、久保が5月23日にポーランドで開幕した20歳以下のW杯(6月15日閉幕)に呼ばれるのか、五輪世代である22歳以下代表が参戦する6月1日に開幕したトゥーロン国際大会(フランス=15日閉幕)に出るのか、それともコパに出場するA代表に招集されるのか、民放とNHKには見極めがつかなかった。実際、各大会の中で唯一のFIFA主催大会である20歳以下のW杯に出るだろうというのが大方の見方だったため、テレビ局はコパの放送から手を引いてしまった」

 試合の時間帯も最悪だった。グループリーグ3試合とも日本戦は午前8時(日本時間)のキックオフ。民放では最後までテレビ東京が放送するかどうか、逡巡したといわれているが、各局とも力を入れている朝の情報番組を休んでまで「久保不在で目玉のないコパを放送するバリューはない」という判断に落ち着いた格好。NHKがBSで放送することを検討したようだが、NHKの判断も<民放各局にならえ>で落ち着いた。

■「日本は大会を軽視している」

 久保が選ばれていたとしても、コパのメンバーは“無名の若手”が中心になるといわれていた。

 森保監督に「東京五輪世代の22歳以下の選手に南米のガチンコ勝負の経験を積ませたい」思惑があったからだが、今回招集された23選手中、初代表の22歳以下選手が13人も含まれており、ベネズエラのドゥダメル監督に「若い選手を多く連れてきた日本は大会の重要性を軽視している」と批判されたが、主力抜きのメンバー構成も日本の各テレビ局の腰が引けてしまった理由になった。

 もともと、DAZNの運営会社であるパフォーム・グループ(イングランド)は、コパを主催している南米サッカー連盟(CONMEBOL=本部パラグアイ)と南米各国リーグの放送などで太いパイプがあり、早い段階で「コパはDAZNが独占配信する」という話が流れていた。

 それでも民放かNHKのBSが「せめて日本戦くらいは放送するだろう」ともっぱらだった。

 しかしフタを開けてみると――。テレビ局は18歳の久保に振り回された揚げ句、大局を見誤った。久保も罪作りな男である。

19/06/26 06:00
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