>>1の続き

昨年までは、HPなどで選考委員である批評家の名前は開示されていた。だが、今年は明らかにされていない。
そこで、どんな批評家が選考したのか代表理事であるT氏に事情を聴こうと事務局に電話すると、事務局長と名乗る金子尚樹氏から折り返し連絡があった。

「T氏は代表理事から離れるので、私が代表理事になることになりました。ですので、今回の受賞式などの責任者は私ですので、私が答えたいと思います」

そこで、改めて選考委員についてたずねると、

「今回から選考委員については、無記名で行うことになりました。Sさんは戻ってきてくれましたが、そのほかの選考委員の方々はダメでした。なので、地方紙の映画記者のご協力も得ています。今回は7人の方に選考委員になっていただきました。それ以上のことは明らかにすることはできません」(金子氏)
とのことだった。

だが、選考委員を降りた6人の内のひとりである垣井道弘氏はあきれ顔で話す。

「我々は批評家として名前を出してみんなで話し合い、責任を持って選んできたわけです。7人のうち1人は残りましたが、批評家のいない批評家大賞なんてありえない。選考者を明らかにして、選考理由をここまで詳しく書くのは、この賞くらいなんです。彼らが映画賞を開催するのは勝手ですが、『日本映画批評家大賞』という名前は使ってほしくないですね」

日本映画批評家大賞とは、《批評家による批評家だけの目で選んだ他に類を見ない賞》なのだ。水野晴郎さんをはじめ、淀川長治さんや小森和子さん、そして昨年まで選考委員を務めた批評家たちは皆、名前を出して選んできた。

それなのに、誰が選んだかも分からない賞を、今年の受賞者はどんな気持ちで受け取るのだろうか――。


取材・文:荒木田 範文(FRIDAYデジタル芸能デスク)
埼玉県さいたま市出身。夕刊紙、女性週刊誌を経て現職。テレビやラジオなどにも出演中