5/14(火) 22:34配信
 日本脚本家連盟(鎌田敏夫理事長、東京都港区)から最低脚本料(30分)の値上げを要請されていたNHKが、今年度からのテレビ(全国放送)の脚本料値上げに応じた。ドラマ脚本で現行から2千円アップの19万円などとなった。テレビの最低脚本料値上げは、平成13年度以来18年ぶりという。ラジオについての値上げは見送られた。(大塚創造)

 連盟は30年8月、ドラマの最低脚本料(全国放送)について、テレビ(30年度まで18万8千円)、ラジオ(同10万3千円)とも20万円とすることなどを求める改定案をNHKに提示。同年12月から交渉に入った。

 しかし、NHKは(1)令和元年10月の消費税増税分2%を肩代わりするなどの受信料の実質値下げ(2)平成30年12月からBSで始まった4Kと8Kの放送(3)テレビと同じ番組をインターネットでも配信する常時同時配信が今年度中にも実現見込み−などを挙げ、予算確保のため一律値上げは困難との見解を示した。

 これに対し、連盟はNHKの受信料収入が30年度まで5年連続で過去最高を更新する見込みであるにもかかわらず、「17年間の長きにわたってテレビ放送の全国放送番組の最低脚本料が据え置かれているのは由々しき事態だ。最低脚本料の値上げによる事業収支への影響も極めて限定的」などとして、テレビについての値上げを改めて要請した。

 その結果、NHKはテレビの全国放送の最低脚本料について、(1)ドラマ脚本を2千円アップの19万円(2)翻訳脚本を1600円アップの15万2千円(3)バラエティーや歌番組などの構成脚本を1千円アップの9万5千円−とすると回答。連盟も受け入れた。

 ドラマ脚本のうち、テレビのローカル放送(9万8千円)やラジオの全国放送(10万3千円)などは現行維持となった。ラジオの最低脚本料値上げは15年度が最後となっている。

 また、民放の最低脚本料については、テレビ、ラジオとも18年度の値上げを最後に改定されていないという。

 NHKの番組は受信料で制作されていることを踏まえ、連盟事務局は「受信料の値下げだけでなく、視聴者への最大の還元は良質な番組の提供に他ならない。次代を担う脚本家を育成して良質な番組を制作するためにも最低脚本料の値上げは重要で、視聴者の皆さまにも理解してほしい。脚本家を志望する人が希望を持てるよう今後も改善を求めていきたい」と話している。

 一方、最低脚本料の値上げに応じた理由や考え方などについて、NHKは「団体との交渉内容および経緯については、答えを差し控えさせていただく」としている。

 日本脚本家連盟 昭和41年3月に設立され、現在1500人を超える脚本家が入会している国内最大の脚本家団体。放送局や番組制作会社との間で脚本の執筆条件や使用条件の改善を図るとともに福利厚生制度の充実も展開している。45年に次世代を担う脚本家を養成する教育事業を開始し、49年には脚本家と著作権の信託契約を結んで著作権管理団体としても活動。現在は管理著作物の放送やインターネット配信などの使用許諾、使用料の徴収・分配を行っている。

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