日本が世界に類を見ない早さで少子高齢化社会に突入したのは知られているとおり。その影響はテレビ界にも強く及んでいる。

 15〜29歳のいわゆる若者人口の割合は、1970年には全人口の27・8%を占めていたが、1990年には21・7%にまで下がり、現在は15%以下にまで落ちている。一方、65歳以上の高齢者は28%を超えている(総務省統計などより)。

 テレビ番組はその時代の視聴者の年齢構成に左右されてしまう。数が少ない層に向けた番組はつくりにくい。なかなか視聴率に結びつかないからだ。このため、現在は若者たちをターゲットにした番組が減りつつある。

 高齢者の増加がテレビに強い影響を与えていることを示す象徴は、健康情報番組の台頭だろう。テレビ界の檜舞台であるゴールデンタイム(午後7時〜同10時)に健康情報番組がずらりと並んでいる。「名医とつながる! たけしの家庭の医学」(テレビ朝日系)「名医のTHE太鼓判! (TBS系)、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)――。

 その中身はというと、「心臓の老化を止める」「おいしく食べて尿酸値オフ」「悪玉コレステロール撃退」など。これに興味を持つ若者は少ないだろう。

 だから、若者は数が少ない上、テレビから離れてしまう。ネットなどへシフトする。それを危惧するテレビ関係者は数多いのだが、若者が見たくなるような番組が減っているのだから仕方がない。

 データを見てみよう。既に若者のテレビ離れが指摘されていた2013年の10代は、それでも1日に102・5分、テレビをリアルタイム視聴していた。だが、2017年は73・3分にまで減ってしまった(総務省調べ。以下同)。急ピッチでテレビ離れが進んだのだ。

 録画で見る若者が増えたわけでもない。10代の録画視聴時間は2013年には1日17・9分だったが、2017年は10・6分にまで下がってしまっているのだから。

 20代の傾向も同じ。2013年のリアルタイム視聴時間は1日127・2分だったが、2017年は91・8分に。録画視聴時間も18・7分から13・9分に落ちてしまった。

 現在は中高年以上がテレビを見ているので、民放の経営は揺らいでいないが、10代と20代がやがて中高年となったとき、どうなるのか? 急にテレビを見るようになるとは考えにくい。このままいくと、民放は近い将来、重大なピンチに立たされるに違いない。

 かといって若者におもねる番組づくりをすべきかというと、そうは思わない。半面、中高年以上が好みそうな作品ばかりになるのもマイナスだろう。それでは未来がない。「若者にも中高年以上にも視聴者が片寄らない番組づくり」を目指すべきだ。それが少子高齢化時代をテレビが乗り切る道だろう。

 「そんなの無理だ」と言うなかれ。かつてのドラマ製作者はその努力を惜しまなかった。

 たとえば、伝説的ホームドラマ「寺内貫太郎一家」(TBS系、1974年)もそう。このホームドラマは、主人公・貫太郎(小林亜星=当時42歳)から、その長男・周平(故西城秀樹さん=同19歳)、家政婦・美代子(浅田美代子=同18歳)まで、幅広い年齢層の出演者を揃えた。その上で、それぞれの年齢層の喜びや悲しみ、愛を描くことで、幅広い視聴者の支持を獲得した。

 現状はどうかというと、 連続ドラマの主戦場であるプライムタイム(午後7〜同10時)は、中高年以上をターゲットとする作品が増える一方だ。だから、主演者も共演者も年齢がどんどん上がっている。

5/8(水) 11:00配信 現代ビジネス
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