4月3日に幕を閉じた第91回センバツ大会は、何とも後味の悪い大会となってしまった。
その理由は他でもない。準優勝に輝いた習志野に、「サイン盗み」疑惑が浮上していたからだ。

3月28日に行われた2回戦、星稜vs.習志野の一戦。
大会ナンバーワン投手と言われた星稜・奥川恭伸(やすのぶ)(3年)を打ち砕き、習志野は3対1で勝利した。
しかし試合後、星稜の林和成監督(43)が習志野に「サイン盗み」があったと主張し、相手校の控え室にまで乗り込む前代未聞の騒動となった。

「サイン盗み」とは、相手キャッチャーが出した球種やコースのサインを二塁ランナーなどが盗み見し、ジェスチャーで味方バッターに伝えること。
これを防ごうとすると、サインが複雑化して試合時間が大幅に延びるため、99年以降、高野連は大会規則で「サイン盗み」を禁止とした。

「それにもかかわらず、禁止後も『サイン盗み』はたびたび取り沙汰されています。たとえば、02年のセンバツでは福岡工大城東が、
13年には夏の甲子園で花巻東が問題になりました。ニュースにはなっていませんが、地方予選でもたびたび監督同士で議論になっています」(全国紙高校野球担当記者)

いったいなぜ、「サイン盗み」はなくならないのか。
甲子園にも何度も出場した、ある強豪校の元監督は絶対匿名を条件にその理由をこう語る。

「理由は単純で、『サイン盗み』をやらないと負けるからです。サイン盗みをすれば、相手が怪物のような投手でも打てる。
逆に、やらなければ手も足も出ません。やるのとやらないのとでは、打率は格段に違いますよ。
禁止といっても罰則はないし、サインを盗んだ証拠が見つかるケースもほとんどないですしね」

甲子園で勝つことを学校側からの至上命令とされている強豪校の「職業監督」にとって、敗北のプレッシャーは並大抵ではないという。

「負けたら監督をクビになるかもしれない。それだったら、使える策略は何でも使う。
私は監督時代、相手がサイン盗みをやってきているという前提で試合に臨んでいました」(同前)

敗北への恐怖から横行する「サイン盗み」。だが、それをやって勝ったとしても、球児には心の傷が残るという。
元高校球児で、自身も「サイン盗み」をした経験があるスポーツライターの安倍昌彦氏が語る。

「サインが盗めた試合は、普段2割程度の打率が5〜6割に跳ね上がりました。逆にサインが盗めないと、どんな球が来るかわからず、不安でとても心細かった。
もっと打席に集中し、努力して培った経験と技術で投球と向きあっていれば……。サイン盗みなんて、得より損のほうが大きいかもしれませんね」

もちろん、習志野が実際に「サイン盗み」をやっていたかは定かではない。
しかし、今大会を契機に、「サイン盗み」の実態について、もう一度議論されるべきなのではないか――。

FRIDAYデジタル
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