【野球の未来】(上)

甲子園では高校野球が熱戦を繰り広げ、プロ野球は29日にシーズン開幕を迎える。まさに球春到来だが、かつて日本で最も人気の高いスポーツだった野球は今、曲がり角を迎えている。
競技人口は減少し続け、2020年東京五輪で3大会ぶりに実施競技に復活したが、24年パリ五輪では除外されることが確定的だ。
今年1月、日本外国特派員協会で記者会見を開いたプロ野球DeNAの筒香嘉智は「日本の野球界は変わらなければならない」と訴えた。どうすれば変われるのか、人気回復策は…。新たな取り組みの現場を訪ねた。

◆20年で半減

親子が一緒になってキャッチボールをしたり、ティーバッティングに挑戦したり。軟らかいゴム製のボールだから、当たっても痛くない。参加した筒香や西武の森友哉らが手本を示すと、子供たちから大きな歓声があがった。
昨年、堺市で開かれた野球教室「キッズ・ボールパーク」の一コマだ。対象は小学校に入学する前の未就学児。関西に拠点を持つスポーツ用品メーカー21社が集まって発足させた「野球・ソフトボール活性化委員会(球活委員会)」が、
プロ野球選手会と協力する形で開催した。

第一生命保険が今月発表した「大人になったらなりたいもの」の調査結果で、野球選手は男の子の2位。サッカー選手が2年ぶりにトップの座を奪い返した。全国の保育園・幼稚園児と小学生を対象に毎年実施している同調査で、
男の子の1位の常連だった野球選手だが、2010年以降、サッカー選手を上回ったのは17年の1度しかない。

日本中学校体育連盟の加盟校調査では、軟式野球部の男子部員数は32万人超だった01年から20年弱で半減。日本高野連の加盟校(硬式)数も05年の4253校から昨年は3971校と、13年連続で減少し続けている。

◆親子楽しく

子供たちがバットやグラブなどの用具を使い、ルールも複雑な野球を始める年齢は、他競技よりも高くなりがちだ。だが、自然に野球の面白さが分かるようになるまで手をこまねいていたら、競技人口は少なくなるばかり。
こうした現状に、プロ野球選手会や球活委員会は危機感を強める。

そこで、他競技に本格的に打ち込む前の子供たちを囲い込もうと、普及活動のターゲットに未就学児を選んだのだ。「これまでも各球団が小学校訪問はしていた」という大島洋平・選手会理事長(中日)は
「プロ野球選手にじかに接して楽しく遊ぶことで、園児に少しでも野球に興味を持ってもらいたい」と強調する。

手始めとして実施された「キッズ・ボールパーク」の会場を堺市にしたのには、多くのプロ野球選手を輩出し、野球熱が高いとの理由もあった。公園で親子でキャッチボールをする姿もほとんど見られなくなっている中、
球活委員会の久保田憲史代表理事(ミズノ執行役員)は「親子でイベントに参加してもらうのも狙いの一つ」と説明する。野球になじみのある親の世代が「初心者」の子供に競技の楽しさを伝える場にしたいからだ。

「野球人口の減少は将来に関わる問題」と大島理事長。選手会が球活委員会とタッグを組んだ活動は始まったばかり。地道な普及活動を継続していくことが人気回復につながると信じている。

2019.4.3 13:58
https://www.iza.ne.jp/kiji/sports/news/190403/spo19040313580038-n1.html