動画ストリーミングサービスの米ネットフリックスは、2013年に初のオリジナル・ドラマシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」を公開して以来、オリジナル作品を最も重要なコンテンツと位置づけてきた。

だが、米調査会社7パーク・データによると、ネットフリックスが配信しているコンテンツの63%は、コンテンツ使用許諾契約を結んだ他社の作品だ。同社の方針から考えれば、このデータに驚く人もいるかもしれない。

オリジナル・コンテンツに数十億ドルを費やしているネットフリックスは依然として、「ジ・オフィス」「フレンズ」「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」などの古いドラマシリーズに大きく依存している。

レガシーメディアが独自のストリーミングサービスを開始するためにこれらの番組のライセンス供与をやめれば、各社の競争が激化すると同時に、消費者にとってのネットフリックスの価値は大幅に失われるかもしれない。

■他社コンテンツの価値

ネットフリックスのテッド・サランドス最高コンテンツ責任者によれば、同社は何年も前から、配信契約を結んだコンテンツを失った場合に備えてきた。

それでも、オリジナル・コンテンツに力を入れる同社の方針は、他社の番組への依存から抜け出すことにつながっていない。昨年11月に同社のストリーミングサービスで最も視聴された番組の1〜4位までのうち、3番組が上記のドラマだった。

ネットフリックスは年内の「フレンズ」の配信のため、1億ドル(約111億3800万円)を支払ったと伝えられている。前回の契約料は3000万ドルだったとことから、契約延長のために3倍以上を支出したことになる。

だが、ネットフリックスにとっては残念なことに、同社が永遠に「フレンズ」の配信を続けることはできないだろう。この作品を所有するワーナーメディア(現在はAT&Tの子会社)は今年、ストリーミングサービスを開始する予定だ。

「グレイズ・アナトミー」を所有するウォルト・ディズニーも今年、同サービスに参入する。NBCユニバーサルも2020年には独自のサービスを開始する計画だ。それまでには、「ジ・オフィス」のライセンス供与を中止するだろう。

ユーザーの視聴時間に大きな割合を占める人気番組を失うことになれば、ネットフリックスはどうなるだろうか。

■「オリジナル」が問題を悪化?

米国の加入者のうち、ほぼ他社のコンテンツのみを視聴していたユーザーの割合は、2017年には40%を超えていた。そうしたユーザーの数は、昨年には2分1程度に減ったとされているが、それでも割合は20%(約1200万人)だ。つまり、これらのユーザーは同社が昨年までに公開したおよそ700のオリジナル・コンテンツを、ほとんど視聴していなかった。

実際のところ、同社がオリジナル番組を膨大な数に増やしていることは、問題をさらに悪化させている可能性がある。ある調査によれば、コンテンツの数があまりにも多い場合、消費者は最も親しみのある番組を選ぶ傾向があるという。

■お金で解決できない問題

ネットフリックスは昨年、コンテンツに130億ドルを費やした。そのうち85%が、オリジナル番組に充てられた。同社は戦略の限界を認めるどころか、問題となっているその戦略に今後、より多額の資金を投入するつもりのようだ。

今年の予算について、同社はコンテンツ別の詳細を明らかにしていない。だが、コストはこれまでと同様のペースで増加を続け、今年は175億ドルに達するとみられている。一方で、同社の売上高は、支出の増加を賄えるほどには増えていない。

コンテンツ制作にかかるコストの増大を受け、同社は料金の値上げに踏み切った。これは、ディズニーなど3社の成長の可能性を高めることにつながるだけだ。ユーザー数の増加のペースが鈍化する中で3社がサービスに参入すれば、ネットフリックスは一層大きな打撃を受けことになるだろう。

筆者が経営する調査会社ニュー・コンストラクツのデータが示すところでは、ネットフリックスが最近の評価額を妥当なものとするためには、ユーザー数を5億人(現在のおよそ3倍)にまで増やす必要がある。

だが、現在の競争環境から考えれば、それが実現されるというシナリオはありそうもない。


3/13(水) 12:00配信 Forbes JAPAN
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190313-00026043-forbes-bus_all