レジェンドが苦しんでいる。シアトル・マリナーズのイチロー外野手が11日(日本時間12日)のオープン戦出場時点で6戦16打席連続無安打(四球を含む)となり、通算23打数2安打2打点3四球、打率.087と1割を切ったまま低迷を続けている。

マイナー契約でスプリングトレーニングに招待選手として参加している立場だが、成績だけみればメジャー昇格は非常に厳しい状況と言わざるを得ない。

“最重要事項”

 だがイチローは故障でもしない限りは、間もなくメジャーへ昇格することになるだろう。言うまでもなく3月20、21日に日本の東京ドームでオークランド・アスレチックスとのMLB開幕2連戦が組まれているからだ。

 大会主催者のMLB、そして日本野球機構(NPB)、読売新聞社としてはマリナーズのベンチ入りメンバーにイチローが加わるか否かは“最重要事項”。その辺りの事情はマリナーズ側も当然ながら百も承知でジェリー・ディポトGMが明言している通り、日本の誇るスーパースターのメジャー昇格を規定路線としてとらえている。

 日本での開幕2連戦は25人から補充要員3人を含めて28人に枠が増えることも手伝い、失礼を承知で言うが“客寄せパンダ”としてのメジャー昇格であったとしても批判は起こるまい。

 この母国・日本での開幕2連戦は米メディアの間で「イチローの引退ロードになる」とみられている。マリナーズは大功労者のイチローに華々しい花道を用意しようと日本遠征メンバーに入れるため、オープン戦での調子云々にかかわらずメジャー昇格をあらかじめ決めていた――。米メディア同様、そういう見解を抱いている人は少なくない。

 問題は日本遠征後だ。実際のところ、イチローは日本の開幕2連戦で引退することになるのだろうか。それとも米国へUターン後も奇跡的にメジャーリーガーとしてロースター定着を果たせるのか。

 マリナーズ側は、まだ処遇に悩んでいるようである。現状のイチローは確かに成績だけみると衰えが隠せない。10日の時点で三振も26打席中「7」。かつて動体視力に優れていたイチローにとっては考えられないような酷い数字だ。それでも45歳という年齢でありながらメジャーリーグのスプリングトレーニングで第一線の選手たちとともに同じメニューをこなし、オープン戦でプレーしていることについては関係者に少なからず驚きを与えている。

 イチローはマリナーズ復帰を果たした昨季、5月3日に「スペシャルアシスタントアドバイザー」の契約を結び直し、残りの試合に出場しなかった。そこから1年近く実戦離れが続いていたものの、今春から再びメジャーリーグ復帰を目指している。

 これだけの長期間に渡ってゲームに出場しなければ、普通は試合勘も必然的に失う。ましてや今年10月で46歳を迎える身体だ。常識的に考えれば、どれほど自信があったとしても長いブランクと高齢という2つのデメリットにさいなまれながらメジャーリーガーを相手に実戦出場することなど、まず不可能である。

◼??もういい加減にやめるべき

 しかしながら、こうした声が米国内で報じられることはなく、イチローの現役続行に同調する米メディアの記事は皆無に等しい。残念ながら、それが現実なのだ。“いくらレジェンドであっても、もういい加減にやめるべき”という論調こそが、海の向こう側で取材を重ねるビートライターたちの総意のようである。

 一方で日本のメディアは対照的にレジェンドの引退カウントダウンに関し、不思議なほど大々的に報じていない。イチローに対する配慮、そして敬意を表してのことなのだろう。

 とはいえ強いて言うならば、むしろこちらのほうが「正解」ではないか。イチローは日本人メディアを以前から選別し、今も基本的にクラブハウスでは2人の担当記者にしか対応しない頑固なスタイルを相変わらず貫いている。

 そうした流れのもとで引退という不利益な記事を掲載すれば、難しい性格の持ち主であるイチローの機嫌を損ねてしまい、なおのこと取材がしにくくなってしまうかもしれない。こうした想像を膨らませるが余り、日本の各メディアはイチローに忖度している背景も実はあるようだ。

3/13(水) 12:15配信 wedge 全文掲載
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