3/3(日) 10:00配信
電車の英語アナウンス、実はあの人…NHK「英語であそぼ」出演

 電車内で流れる「The next station is……」(次の駅は……)などの英語アナウンス。実は全国の多くの路線で、声優でタレントのクリステル・チアリさんの声が使われている。約20年前にNHK教育テレビ(現Eテレ)の子供向け英会話番組「英語であそぼ」に出演していたことでも知られるチアリさんに、電車の英語アナウンスの「知られざる世界」を聞いた。【大村健一/統合デジタル取材センター】

 「イベントの司会などの仕事をする時、最初に『私のことを見たのは初めてかもしれませんが、声を聞いたことがある方は多いと思います』と言ってから、その地域の駅名を使って英語の車内アナウンスを実演すると、ものすごく喜ばれます。鉄道という乗り物が、私の人生のレールを引いてくれた気がします」 とチアリさんは話す。

 すでに20年近く、英語の車内アナウンスに携わっている「第一人者」だ。日本語でのテレビ番組のナレーションやスポーツイベントの司会なども精力的にこなしているが、ツイッターやブログでは「トレインアナウンサー」を肩書として使っている。

 ◇きっかけは「英語であそぼ」 全国の鉄道へ

 最初に英語アナウンスを収録したのは2000年。「英語であそぼ」の「クリスお姉さん」だった時期に東急電鉄から依頼が来た。同年8月に東急目蒲線が分割されてできた目黒線の車両向けだった。「東急電鉄の方がお子さんと番組を見てくれていて、そこでいただいたご縁が、各地の仕事につながりました」

 折しも02年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会を前に、外国人観光客向けの英語アナウンスの需要が高まっていた時期だった。以降は小田急電鉄、西武鉄道、京王電鉄などの私鉄、JR東日本の山手線、中央線快速、京浜東北線などの仕事が舞い込んだ。

 仙台市地下鉄、あおなみ線(名古屋市)、JR四国、西日本鉄道(福岡県)などでも起用されている。チアリさん自身も把握しきれないほど多くなった。

 ◇収録に数日も 「不自然」とクレームが来る理由

 一つの路線の音声を最初から録音する場合は3日ほどかかることもある。駅名案内、乗り換え案内、さらには大雪で止まった場合など、さまざまな場面を想定したアナウンスもある。収録しても、実際にはほとんど使われないものも少なくないという。

 ダイヤ改正などで変更しなければならない場合はその都度、追加分を録音している。「何年か前の声とつなげても違和感がないようにするため、のどのケアは欠かせません」

 乗客から鉄道会社に「ネイティブの英語ではない」「不自然」などとクレームが来ることもしばしばあるという。だが、そこには理由がある。アナウンスを規定の長さに収めるため、各単語の間に短い空白を挟んで調整することがあり、その場合は流れるような発音にはならないのだ。「いただいたご要望のとおりに読むのが、声優の仕事ですから」とチアリさんは言う。「多くの人に聞いてもらえるのはうれしい。『クリスの声を聞いて元気になった』と言ってもらえるように、ヒーリング(癒やし)の気持ちを込めて収録に臨んでいます」

 ◇トレインアナウンサーならではの趣味「しゃべり鉄」とは?

 「トレインアナウンサー」ならではの趣味もある。自分のアナウンスが流れる電車で旅し、放送される自分の声に合わせて同じ英文をつぶやく。「鉄道ファンにも、(電車に乗るのが好きな)乗り鉄、(駅弁などを食べるのが好きな)食べ鉄、(車両を撮影するのが好きな)撮り鉄などいろいろありますが、しゃべるために乗る人はあまりいないと思います」と笑った。その様子は時々、動画サイト「ユーチューブ」の自身のチャンネルに投稿している。

 ◇駅のホーム向け英語アナウンスも 今後の目標は?

 今年はラグビーW杯、来年は東京五輪・パラリンピックで世界各地から訪日客が予想される。それに伴い、近年は駅のホームで使用される「The next train will be arriving shortly(間もなく次の電車が到着します)」などを収録することも増えたという。

 今後の目標はたくさんある。「新幹線や(27年に開業予定の)リニア(中央新幹線)。あとは甲子園が地元でタイガースファンなので阪神電鉄、祖母と一緒によく乗った阪急電鉄も、いつか絶対にしゃべりたいです」と目を輝かせた。

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