「アイドル戦国時代」とも呼ばれる平成のアイドルブームを語るうえで、「握手会」の存在は欠かせない。
「ブスキャラ」ながら昨年のAKB48選抜総選挙で2位を勝ち取ったSKE48の須田亜香里(27)も、
握手会での「神対応」がきっかけで人気に火がついたという。

このように、握手会はアイドルにとってビジネスチャンスの場だ。
好機をモノにするべく行われているさまざまなテクニックとその効果について、心理学の観点から検証してみよう。

女性アイドルの握手会へ足を運ぶと、手の握り方だけでも十人十色なことに驚かされる。
手を真っ直ぐ前に出して握るポピュラーな形式の他に、ファンの手を包み込んだり、
あえて片手で握手してもう一方の手ではさまざまな手振りをしたりと、とにかくバリエーションに富んでいるのだ。

その中でも、筆者がよく目にするのが、両方の手の平を上に向け、ファンに手を重ねてもらうというスタイル。
『「人たらし」のブラック心理術』(だいわ文庫)などの著書がある心理学者の内藤誼人氏は
「この方法は心理学的に考えても、ファンを獲得するのに非常に効果がある」と語る。

「下から差し出す握手は、自分の謙虚さのアピールをしつつ、相手を立てる意味があるので、
アイドルがする握手としてはうってつけです」(内藤氏、以下同)

他にも、昨年1月にグループに加入したAKB48の・矢作萌夏(16)の握手は、指を絡ませて握手する“恋人繋ぎ”をしたうえで、
繋いだ手を自分の胸元に寄せているという。こうした超近距離の神対応で、ファンを“釣って”(自分の虜にして)いるのだ。

現に、彼女の握手券の売り上げは右肩上がりで、今年1月に開催されたソロコンサートでは約2千人ものファンを動員している。
こうした“釣り師”と呼ばれるアイドルは、握手会で“大漁”に、成果を挙げるのだ。

しかし、こうした釣り師のやり方は諸刃の剣でもあるようだ…。

「恋人繋ぎのような握手は、『絡み合う』『交わる』という行為によってセクシャルな印象とも結びついてしまうため、
『尻軽』といったイメージを与えてしまう恐れもあるようです」

また、内藤氏は、「『握手会』というイベントは、そもそも開催するだけでファンを増やす効果が期待できる」と話す。

「人は誰しも他人に近付かれると不快に思う『パーソナルスペース(個人空間)』がありますが、
握手会ではアイドルの個人空間にファンは入ることができ、物理的に距離が近付きます。
さらに握手で余計に距離が縮まると、比例して心理的な距離も縮まるのです」

数十秒とはいえ、本来なら手が届かないはずの存在に至近距離で会えるだけで、
ファンは今まで以上にアイドルのことを好きになるというわけだ。

神対応ができるアイドルは、ファンから何を言われても即座に気の利いた返しができたり、
ファンの顔と名前を覚えて自分から名前を呼んだりと、会話においてもサービス精神が旺盛だ。

特筆すべきところで、須田亜香里は、ファンひとりひとりの名前や特徴、
握手会で話したことや受け取ったファンレターの内容を書き留めた「ファン情報ノート」を作っているという。

さらに、相手が心地よくなる「声色」というのもある。

「実は会話の内容以上にファンの心を掴むのに重要なポイントがあります。それは声の“高さ”です。
人は『ソ』か『ラ』の音階がもっとも心地よく耳に響き、心が弾むといわれています。

つまり、『ソ』か『ラ』の高い声で話せば、会話の内容がシンプルでもファンは高揚し、
『この子と話すのは楽しかったな、また会いたいな』と思うのです」

しかも、アイドルの多くはこの声色を無意識のうちに使っているという。

「これまでの人生経験の中で知らず知らずのうちに対人スキルが磨かれていくと、無意識にこうしたコントロールができるようになるんです。
ほかにも、相手の目を見ながら口角を上げて微笑み、『私はあなたを受け入れていますよ』と安心感を伝えることも、
イドルが無意識に行っているコミュニケーション術のひとつです」

「自分を認めてほしい」という承認欲求の強い人間ほど、アイドルにハマりやすいのだろう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190226-00557231-shincho-ent&;p=1