映画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」が22日公開される。大森立嗣(たつし)監督は悲しみを受容する遺族を、ユーモアを交えて描いた。

 宮川サトシのエッセー漫画を映画化。オファーを受けた当初、大森監督は直接的すぎる感動話に、自身の作風との違いを感じ「やる映画ではないかなと思った。男が涙を流すのもどうかと思ったし」とためらったと明かす。思慮の末、主人公の父と兄、恋人ら周囲の人物像を掘り下げた脚本に仕上げ、原作と異なる見せ方を打ち出した。

 漫画家を志すサトシ(安田顕)が、葬儀場で母(倍賞美津子)の遺骨を前にする場面から始まり、過去へとさかのぼる。母が他界する過程と、残された家族がその死を受け止めるまでの2段階で考えた。「つらいだけでない、悲しみを乗り越える姿を見たいと思った。原作を読んだ時に感じた滑稽さも入れたかった」

 本作を含め、性犯罪の加害者と被害者の共依存的関係を描いた「さよなら渓谷」、茶道を題材にした「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」など自作には共通点がある。「分からないものにどう触れていくか。日々生きる中で本当に必要なもの、どうしても感じてしまうものに興味がある」 (古谷祥子)


2019年2月21日 朝刊
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