5番勝負第4局が18日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、先手の里見香奈女流名人(26)=女流王座、女流王将、倉敷藤花=が87手で挑戦者の
伊藤沙恵女流二段(25)に勝ち、対戦成績3勝1敗で10連覇を達成した。宝刀の中飛車で挑戦者の居飛車穴熊を破壊して防衛。女流棋戦のV10は
1990年度の女流王将戦での林葉直子さん(51)以来28年ぶり2人目。平成最後の女流名人戦で大台到達を果たした絶対王者を林葉さんも祝福した。

 右手で「1」、左手で「0」をつくるポーズを求められ、遠慮がちに笑う里見の顔は、17歳の頃と何も変わっていなかった。「振り返ってみると、
あっという間でした。少しずつ成長できた時間でした」

 3月で27歳になる女流名人は、ついに10連覇の大台に達した。「意識したことはなかったですけど、開幕前から注目を実感していたので、
自分の力を出し切って結果を出せてうれしく思います」

 指したい手を指す。そして、勝つ。里見将棋を象徴するV10達成局となった。先手で得意の中飛車に構えると、伊藤は珍しく居飛車穴熊の堅陣を敷いた。
「ずっと難しかった将棋」に挑んで中央の主導権争いを制すと、飛車が盤上を縦横無尽に走る展開に。「指したい手を指して、確実に攻めていける形が見えた」。
十分な戦力で確実に穴熊を粉砕し、一気に寄せた。

 第3局はダメージが残ってもおかしくないレベルの完敗だったが、16日に一気に切り替わった。午前中、両親とクルージングを楽しみ
「今までにはなかったような時間を過ごせました」とリフレッシュ。午後は藤井聡太七段(16)の朝日杯連覇を中継で見守り、震えた。
「渡辺先生(明棋王)との決勝は、あんな将棋をいつか指してみたい、と思えるくらい素晴らしい将棋。ものすごく刺激を受けました」。平常心と闘争心を
胸に決戦の盤上に臨んだ。

 女流名人の10期獲得は清水市代女流六段(50)と並ぶ史上最多タイ。女流棋戦での10連覇は林葉さん以来28年ぶりの金字塔となった。
「林葉さんは…現役時代は知りませんけど、おキレイで将棋の強い方というイメージです」

 昨年3月に奨励会を退会した後、将棋を指せる喜びを抱きながら戦っている。「純粋に将棋を楽しんで指すことができています」。昨年末には
左くるぶし捻挫を負い、正座もできない中で戦って周囲への感謝の念も強くなった。「女流名人戦を戦ってきた中、いちばん周りの方々に助けられた
シリーズ。感謝の気持ちでいっぱいです」。3局目まで使った松葉づえは卒業。自力で歩き、10連覇を飾った対局室を出た。

 1974年、ONを擁した巨人の伝説はV9で終幕した。今年1月、史上最強と称された帝京大ラグビー部の大学選手権連覇は9で止まった。

 里見が放ったのは10度目の輝きだった。高校3年で手にした女流名人の称号を守り続け、平成という時代を終える。(北野 新太)

スポーツ報知
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