2019.02.08
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(略)
 爆竹をめぐる背景を説明していたのだが、いつの間にか爆竹とはまったく関係ない話題が挿入され、旧正月休みに観光地などで起きるトラブルの数々も紹介された。
たとえば、切符売り場の行列に割り込んで逮捕された男、高速鉄道などの指定席を勝手に占拠する「覇座」と呼ばれる人たちの狼藉、空港で女性2人が席をめぐって殴り合いをしている光景などが、監視カメラの映像や視聴者がインターネット上にアップした投稿の映像を用いながら説明された。

 こういった内容のVTRが流された後、司会の羽鳥慎一アナウンサーから話を振られた玉川徹氏は、おもむろに<これ、花火の話で始まったわけでしょ。で、覇座の話とか間に入れるじゃないですか。全然関係ないんですよ。なんでこれ入れちゃうんだろうって、ディレクターの心理ってなんだろうって、そこを僕考えてたんですけど>と話を切り出した後、このようにコメントした。

<中国でこんなにモラルが低いんですよって話、いっぱいあるじゃないですか。うちの番組も含めて。それってやっぱり、中国に対して恐れを抱いているんでしょうね。いままではずっと下に見てきたんだけど、もう抜かれてるし、経済では。どんどんどんどん置いていかれるんじゃないかという意識が、(モラルでは)中国はこんなにまだ下だよっていうのをやりたくて仕方がなくなってしまう意識っていうのがあるのかなと僕には思うんですよ>
<中国ってもう富裕層だけで日本に匹敵するぐらいいるんですよ。で、中間層が3億人いるんですよ。そういう人たちがどんどん海外旅行に行く。日本にも来るじゃないですか。そうすると、日本を含めた先進国のモラルを見て、で、国に帰るわけですよね。そうすると、自分たちが中国でやっていることがやっぱりちょっと遅れているんだってことに、彼はだんだん気づき始めるのに決まっているんです。そうすると、いつの間にかモラルだって、上がっていくはずなんですよね。でも、いまはそうじゃないってことを見たくてしょうがないんですよね、日本人は。まだそれで安心だ安心だって思おうとしている心理がディレクターのなかにすらあるというね>

 「爆買い中国人」といったフレーズが象徴的なように、日本にやってくる中国人観光客を忌み嫌う傾向はここ数年で完全に定着した。そういった心理を突く企画は視聴者のウケがあるからディレクターも、爆竹とはなんの関係もない中国人同士の小競り合いの映像などを無理やりインサートさせたのだろう。
視聴者もメディアが流す情報を考えながら見る必要がある
しかし、こういったコンテンツを喜んで享受することが、今後の日本社会において、何かポジティブなものをもたらすのかどうか、メディアも視聴者も胸に手を置いてじっくり考え直す必要がある。他の国からやって来る人々を愚弄して対立を深めたところで、それによってもたらされるものなどなにもない。

 また、メディアが嘲笑する中国の人たちの姿は、「エコノミックアニマル」と呼ばれ世界中の観光地で忌み嫌われたかつての日本人の姿でもあるのだ。青木理氏は玉川徹氏のコメントを引き継いでこのように語っている。

<中国を封じ込めなくちゃっていう政治的なメッセージがアメリカも含めてあると思うんだけど、そういった一種の敵対意識だったり、一種の排他感情みたいなものが煽られてしまうというのがあると思うので、それはテレビが悪いんだけど、しかし見る方も、その辺を考えながらきちんと見ないと、中国はモラルが低いとか韓国はどうとかって気持ちに(なってしまう)。日本だってかつてはそうだったんですから。アメリカやヨーロッパに行ってバックからなにから全部買い占めて帰ってきて何やってんだって日本が言われた時代がバブルの頃とかにあったんですから>

 「中国人はこんなに意識が低い」と嘲笑するネタが公共の電波を通じて日々垂れ流され、視聴者も喜んでそれを享受しているという状況の方が、品性下劣なうえに性格も悪い、よっぽどモラルが低いものなのではないだろうか。こういった自らを省みる眼差しがメディア内でもっと広まっていくことを切に願う。
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